紙版は2013年6月、電子版は2016年9月刊。ともに青泉社。「腕の中で眠って」「腕の中に抱きしめて」「腕の中の恋人」「黒い天使」「変温ロマンス」の5編および「おまけマンガ①要・復活」「おまけマンガ②沙都・婚前浮気疑惑」収録。
「腕の中で眠って」「腕の中に抱きしめて」「腕の中の恋人」の三編は、単行本「腕の中で眠って」からの再録である。紙の単行本が絶版になってしまったため、こうしたことが起きたのだろうが、当時でも、山内規子の作品が好きで書店で見つけるたびに買い続けて来た、「腕の中で眠って」を持っているファンが、新作が出たと思って本作を買い求め、中を見たら約2/3が旧作だったとわかったら、腹が立つのではないか。このタイトルでは「腕の中で眠って」の再録だとは気づかないのが当然。気付かせないようにタイトルを変えたと言われても言い訳できないだろう。
山内規子が悪いとは言わない。こうした手法は、漫画にとどまらず、出版界では昔から横行していた。このような、いわば読者を騙して二度売り、三度売りするような姿勢は、長い目で見ればファン離れを生むだけで、作者にも出版社にもメリットはないと思う。まして、電子書籍が主流になれば、絶版ということ自体が稀になる。関係者には猛省を促したい。
作者の一存でどうにかなる問題ではないかも知れないが、あとがきで「大変うれしいです」などと能天気に書くのではなく、二度買いしてがっかりしているファンのことを、作者にも思いやってもらいたいとは思う。
なお、「おまけマンガ①要・復活」は紙の単行本「腕の中で眠って」に掲載されていたらしいが、kindleの「腕の中で眠って」には掲載されていない。電子化といっても100%ではなく、省略があったことになる。こういうこともやめてほしい。何も足さず、何も引かず、ピュアな(全く同じ)ものを出版してほしいのだ。
「黒い天使」「変温ロマンス」は初単行本化。作品の内容については文句なしの水準。