鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「君の優しい手」1

紙版は2010年5月、大都社刊。電子版は2014年12月、秋水社刊。連作短編で、「君の優しい手」「シークレット・マーダー」「北園和久の退屈な日常」の三編を収録。初出不明。

山内規子の作品を、これまでホラー&サスペンスとひとくくりにしてきた。怪奇現象もしばしば起きるので、これはもちろん間違いではないが、どちらかといえば、ヒューマンストーリー、ラブストーリー、コメディなどに軸足を置いた作品が多く、殺人事件も起きたりするが、あまり湿っぽくならず、明るい作品が多かった。

しかし、本作は本格的なサスペンス。ハラハラするし、怖い。こういう作品が読みたかった! 山内規子の代表作は「霊感動物探偵社」ということになるのだろうが、確かにこれはこれで優れた作品だが、自分の好みと合致しているという点では、本作こそ最高傑作だと推したい。

江藤美月は、常に右手(だけ)に手袋を着用している。皮膚が弱いから……ということにしているが、実は、素手で他人に触れると、その人が考えていることが読めてしまうから。他人の本心を知ってもいいことはないから。が、うっかり手袋を外した時に他人に触れてしまい……

サスペンス色が強い作品は、紹介が難しい。とにかく、ぞくぞくする話だった。「北園和久の退屈な日常」は番外編で、コメディタッチだけど、最後にほっと一息つける。



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