鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「キス・ミー タッチ・ミー」

  • 生田悠理「キス・ミー タッチ・ミー」

紙版はなく電子版のみ、2018年12月7日、オフィス漫刊。

短編集。連作短編の「キス・ミー タッチ・ミー」「スィートイヴ・スィートラブ」「ニュースな人」の三話および「犬と私と恋をする」。

人気アナウンサーが日本語をしゃべる野良犬(ハル)を飼う話。ハルはクラブのDJで女には不自由しないタイプで、気の向くまま女から女へ渡り歩いていたが、最後は主人公(椎名今日子)の飼い犬になる。今日子はペットを飼う感覚でハルを養っていたが、いつしか本気で恋をしてしまう。

固い会社で出世途上にある若い女性がペットのように男性を養う話というと、小川彌生の「きみはペット」が思い浮かぶが、ほかにもあったような気がする。

ラブストーリーの最もよくあるパターンは、男性の方が女性より年上で収入も上でしっかりしているというもので、これに対するアンチテーゼが女性の方が年上、収入も上、しっかり度も上というものだが、これはこれでよくあるパターンになってしまっている。

本作は、女性の職業がテレビ局の人気アナウンサーなので、そういう立場の人が身元のよくわからない人と安易に一緒に暮らしたりできるものなのかは疑問(週刊誌などが私生活を見張っているだろうから)。また、特定の女に縛られるのを嫌がっていたハルが、なぜ今日子に縛られることを受け入れたのかがイマイチよくわからない。「好きになっちゃったから」ということなんだろうけど。

とはいえ、軽いラブストーリーとしては楽しめる。

「犬と私と恋をする」は、杏子が命を助けた犬だと称する男性が杏子に付きまとう話。生田悠理流の生まれ変わりないし変身ものか、と思ったが、どちらでもなかった。前三編とは無関係の短編だが、犬つながりで一緒に収めたと思われる。あ、主人公の名前がどちらも「きょうこ」だな。



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