鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「クロース・トゥー・ユー」

  • 生田悠理「クロース・トゥー・ユー」(ぶーけコミックス)

短編集。「クロース・トゥー・ユー」「悪いあなた」「虹の楽園」「サマタイム」「峠の我が家」「この素晴らしき世界」「グリーンフィールズ」の7編収録。それぞれの話に直接のつながりはないが、「一人称単数I~VII」のサブタイトルがついている。雑誌連載時はそういうシリーズものだったと思われる。紙版は1994年10月1日、集英社刊。kindle版は2018年12月7日、オフィス漫刊。

「楽園から」に続く、第二作品集ではないかと推察。

表題作は、事故で死んだ男が元カノの買った花に生まれ変わる話。彼女をずっと見ていたい、彼女のそばにいたい、という思いが残ってそうなったらしい。彼女はそこに男の意識が宿っていることを知らない。究極の愛である。オカルトチックな話は本作の実だが、のちの生田悠理らしさの萌芽が感じられる。

「悪いあなた」は、男に騙された女の話。男にとって女はワンノブゼムであり、都合の良い相手でしかない。女は盲目的に男を信じている。しかし、あの男だけはやめておけと多くの人から言われ、信じたくないが浮気の痕跡を見つける。そこで拳銃を持って男と浮気相手の逢瀬の場に乗り込むが……という、非常にサスペンスフルな傑作。

ほかにもサスペンス色の強い話が何話もあるが、いずれも面白い。生田悠理が覚醒した作品集。



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