- 野原広子「消えたママ友」(KADOKAWA)
レタスクラブ連載作品。ただし、後半は書きおろし。
ほのぼのとしたタッチと「レタスクラブに連載されていた」という情報から、ほのぼのした明るい作品を連想したが、かなり黒い話であった。正直、後味がよかったとは言えないが、「ママ友」というのは自分の知らない世界である。知らないことをリアルに思い起こさせてくれたという点で作品としては悪くない。
学生時代の仲間とか、職場の同僚とか、自分だけが関わっている関係なら、自分の判断で付き合ったり縁を切ったりできるが、子供を介しての付き合いとなると、苦手な人でもお付き合いしないといけないとか、文句を言ってあとで子供がいじめられたり仲間外れにされたりしたらイヤだなとか、親が厭な人だから付き合いたくないが子供同士が遊びたがるとか、いろいろ大変な面がありそうだ。自分はとてもうまくやっていける自信はない。
「消えた」人も、会社勤めをしているのにパチンコに嵌まっていきなり借金する? 預貯金も全部夫もしくは姑に管理されていて使えない? しかし5万10万の借金なら、ボーナスで返済できそうなものだし、ボーナスで返せないとなると百万越え? とすると姑だってため息ひとつだけで肩代わりできるとは思えないが……というあたりは、ちょっとリアリティに欠ける気がする。
また、いくら「出て行け」と言われたからといって、スマホも置いて、着の身着のままで家を出るというのもあり得ないのではないか。数日の旅行に出るのだって、スーツケース一つ分くらいの荷物は必要になるのだ。そこは漫画ゆえの誇張表現と考えるべきか。
この人ももう少し知識があれば、姑や夫をモラハラやDVで訴えることができるだろう、慰謝料や正当な財産分与もそうだが、子供に対する母親としての権利をきちんと認めさせることができるだろうに、と思うとちょっとせつない。「彼女には悪いことをした」と夫が反省または後悔するシーンがほしかった、と思う。