鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「ママ、今日からパートに出ます!」

  • 野原広子「ママ、今日からパートに出ます!」(KADOKAWA

ユリコ、40歳。専業主婦になって15年、二人の子供も高校生と中学生になり、学費もかかるところから、パートに出ることにした。が、次々と応募するもなかなか採用に到らない。ようやく採用してもらえた会社も仕事が厳し過ぎて3ヵ月で辞める。次に決まったところは大変だけど長続きできそう。

当初、家族は専業主婦時代と同じように、家のことはすべてママにやってもらうつもり満々だったが、紆余曲折を経て、家族も少しは家事に協力してくれるようになり、自分のことはだんだん自分でするようになって、新たな家族の形ができていく……

という、誠になんというか、毒にも薬にもならない平和な話である。これこそが、当初、野原広子に期待したものである。

仕事を始め、慣れない仕事で体力も精神も使い果たし疲労困憊なのに、家族が何もしないでママがご飯の支度をしてくれるのを待っているシーンを見た時は、何かが起きるのか? と一瞬期待(?)したが、ユリコが窮状を訴え、家族がそれを少しずつ理解するという、教科書のような展開である。

このような「安心して読める作品」が、世の中には必要なのである。そういう作品かと思って「消えたママ友」を読んでしまったから大変だったのだ。本作を読んで安心している。

応募して落ちまくっている時に、ハローワークの人に、なぜ受からないのか訊くシーンがある。職員の回答は明快。「これまで鈴木さんがいいなーと思って応募されたところは、みんなもいいなーと思うところだからです」。これは至言だ。至言なのだが、このやりとり(だけ)は記憶にある。Web広告にでも出ていた(時期がある)のかな?



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