- 田村由美「ミステリと言う勿れ」5(フラワーコミックスアルファ)
エピソード8(放火事件)でまるまる一巻。事件は終わっても話は続いているのだが、一応きれいに収まっている。
いつも常人とは違う視点で物事を述べ、周囲の人を煙に巻く久能だが、ライカに対しては反論されて何も言い返せない、という事態が発生する。ライカの頭の良さを際立たせている。
久能のヒネた性格は、幼児期に何かあったのではとうすうす感じるようになってきた。
エピソード1で、青砥が「あいつ、ずっと自分の父親への恨みを話しているようだった」と語るシーンがある。この時はいったい何をとってつけたような、と思ったが……
エピソード2で、池本に、お父さんに構ってほしくてグレたなんてドラマの中だけ、実際にはただ無関心になっていく、と語るのも、今から思うと、体験談かと思わせる。
エピソード7で、良い人なのに家族が誰もお見舞いに来ないことを嘆く梅津に、「子どもがそういう風な態度を取る場合、たいてい親の方が先にひどいことをしています」と言う。これもニュースや書籍などで得た知識から導き出した一般論かも知れないが、久能自身がそのような人を知っているような気もする。
本エピソードで、「子供のころ、布団にすっぽり頭までくるまれると、外からは見えなくなると思っていました」と語る場面がある。なんでもない無邪気なエピソードともとれるが……
小さい頃、家に帰りたくなくて、いつも図書館でぼんやりしていた、と語る場面もある。その時に出会った女の人に、小さなことでもひとつひとつどんな意味があるのか考える癖をつけることを教えられた、としているが、家に帰りたくない子だったのだ。
ライカは、天使に会いたくて(または、消息が知りたくて、でも自分では動けないから)久能を利用したのだ。ライカはかつて天使を呼んだことがある、とさりげなく言い残した。千夜子は知らない、自分の一存で、と。ライカは虐待家庭のサバイバーなのか?