野暮を承知で表題作にマジレスしてみる。
国家の三要素は国民・領土・主権で、作中でマイ国の首脳は三番目を「政府」というが、まあ同じことだろう。この三つがあれば国家として認められる(可能性がある)が、誰に認められるのかといえば「他国」である。現在世界には200弱の国があるが、独立国家としてやっていきたいのであれば、独立宣言をし、これらの国々に国家であることを認めてもらわなければならない。これが得られなければ、残念ながら国家たりえない。たとえば台湾(中華民国)を国だと認める国は、世界で20か国くらいしかない。だから多くの場面で国として扱われない。
マイ国はそもそも世界に独立宣言をしたのだろうか。したのであれば、つかまえた男の身分照会に外務省に電話するのも筋が通るが、そうであれば、外務省の対応も変わっていたであろう。そもそも、日本国となんらかの悶着が生じ、こんなにのんびりと過ごすことはとてもできないはず。間違いなく、対外的には何も活動していないのだ。それでいて家に来た人間に、理屈をこねて示威行為を取るのはうなずけない。
本作の発表は1975年ごろ。北杜夫がマンボウ・マブゼ共和国を設立したのは1981年だが、恐らくこの作品が頭にあったのだろうと思われる。マンボウ・マブゼ共和国の設立にあたって、星新一が「文化の日があった方がいい」とか、いろいろとアドバイスをした由。マンボウ・マブゼ共和国の国民は一人ではなかったはずだが、元首が亡くなられて、恐らく消滅したのであろう。斎藤由香が二代目元首を名乗ってもいいんですよ?