鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「島さん」1

  • 川野ようぶんどう「島さん」1(アクションコミックス)

2021年1月28日刊。Web広告で頻繁に目にするが、もともとは作者がtwitterに発表していて、バズったことがきっかけだったのではなかったか。その頃に目にした覚えがある。

島さんは、いくつなのか、髪の毛が真っ白いので少なくとも60は過ぎているだろう、もっとかも知れない。生活のために昼間は交通警備、夜はコンビニとバイトを掛け持ちしている。「若い時にヘマして」毎日夜も昼も働かないとピーピーなのだという。

普段は穏やかで愛想がよく、インターネット関連の新機能はなかなか覚えられず若いバイトの子にバカにされる日々だが、怒鳴りまくる客にもていねいに頭を下げ、煙草を売れと騒ぐ未成年には毅然と接するなど、接客態度は見事なものがある。その島さんの背中には派手な龍の紋々が一面に描かれている。現役か、足を洗ったのかはわからないが、島さんは筋者なのだ。

その(元?)筋者の島さんが外道な客をビシーッとする系の話かと思ったが、少なくとも今のところそうではない。冒頭で煙草を買いに来て暴れる未成年子たちも、毅然とかつ穏やかに対応しただけで、相手は退散していく(ただし、手は出さなかったが割と威圧感はあった)。

第二話で、万引きを繰り返しつつ、全然反省していない子の時は、店長は(読者も)この子に相当イライラさせられる。ここは島さんが睨んで脅しをかけるかと思いきや、叱りつけるのはやってきた父親だった。普段は大人しい父の激怒する姿に、さすがに少し反省する姿を見せる……という話である。

第八話は島さんの幼少期の話。母は死に、父親はヤクザの構成員だったが、微罪で警察につかまり、出所すると砂二(島さん)を捨てて逃げた。砂二は知人に預けられるが邪魔者扱いされる。その家に出入りしていたチンピラヤクザの稲三が「今日から俺がお前の父ちゃんだ」と言うのだった。「母ちゃんはまだいねえぞ。これから探さねえとな」が泣かせる。



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