鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「王子様と司書」

  • 小川つぐみ「王子様と司書」(1話~7話)

2018年8月1日刊。表紙を含めて133ページ。

「魔法の最期」の作者・つぐみの他の作品を探したところ、「魔法の最期」以外は「小川つぐみ」名義で作品を出していることがわかった。さっそく本書を購入。期待にたがわぬ名作だった。

とある小国の王子シンは、飢饉が来ることを予測して父である王に進言するも、子どもの浅知恵だと耳を貸してもらえない。果たして飢饉は来て、民は苦しみ、国は弱体化して隣国の侵入を許し、属国とされてしまう。王は殺され、王子は捕らわれの身に。以後、司書という立場で城の資料の管理を担当しているが、実質は幽閉である。

民を救えなかったこと、自国を滅ぼしてしまったことを後悔し、また、この国の支配下になった旧領は、以前よりはるかに豊かになったと知って忸怩たる思いにとらわれ、将来に何の希望も持てないまま、死んだように生きていた。

そこへ、この国の第四王子のエリックと出会い……

BLだということを知らずに読み始め、すぐにそれと気づいて「アチャー」と思った。率直に言って私はBLが好きではない。だからBL漫画は持っていない。例外は「昨日何食べた?」だが、自分はあの作品はBLだとは思っていない。

しかし、ハグやキスのシーンも昔のような嫌悪感を持つこともなく読み進めることができた。このあたりは年を取ったということか。そして、真摯に読んでみれば、この話は必ずしもBLでなくても成立するのではないか、と思った。骨格がしっかりしているのだ。

エリックはシンの教えを受けて聡明な王子として成長。自分の治める土地として、シンの旧領を希望し、それがかなうとシンを参謀として連れていく。これによってシンは、旧領の民人のために尽くすという夢がかなう。

参謀としてシンを連れていきたいと願い出たエリックに、王が告げるのである。「それほど聡明な者を側に置くならば、お前は覚悟せねばならない。いつも隣で信頼に足る領主かを見定められることになる。善政を敷き、豊かにせよ。それが領主の心得だ」と――

こういう展開になるとは思わなかった。すごい。見事だ。



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