鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「幽霊狩り」

  • 曽祢まさこ「幽霊狩り」(三部作 完全版)

「ダニエル」「魔犬シリウス」「マリアンヌ」所収。

  • 曽祢まさこ「幽霊狩り2 天使が夢を見る夜に…」

「天使が夢を見る夜に…」「モロー氏の帰宅」所収。

「幽霊がり〔ダニエル〕」は「増刊なかよし」(1974年8月号)に掲載された。当初は読み切りの予定だったが、好評だったため、冬から翌年にかけて「魔犬シリウス」「マリアンヌ」を発表。

単行本は1975年11月5日、講談社より「幽霊がり」として刊行。ただし収録は「ダニエル」「マリアンヌ」「ブローニイ家の悲劇 」の三編で「魔犬シリウス」は未収録だった。1991年より宙出版より「魔犬シリウス」が収録された「幽霊狩り」が刊行された。

続編に当たる「天使が夢を見る夜に…」は「アップルミステリー」(宙出版、1991年10月号~12月号)、「モロー氏の帰宅」は「アップルミステリー」(1992年8月号)に掲載されたが、これらは長く単行本化されず、1998年10月にそね印同人誌としてようやく陽の目を見ることとなった。

現在はkindle版が冒頭の二冊としてゴマブックスから刊行されている(2018年10月19日刊)。

作者はもともと「幽霊狩り」としたかったが、「なかよし」掲載時に、編集者から(読者層を考慮してか)「狩り」の字はひらがなにしたいと言われ、「幽霊がり」としたもの。現在は「幽霊狩り」で統一されている。

曽祢まさこ最初期の作品と思われるが(それゆえに)、さまざまな変遷があり、入手が難しかった。自分はかつて宙出版の単行本を持っていたが、2の存在は最近まで知らなかった。現在はとにかく完全な形で入手できる。よい時代になった。

物語は、ダニエルという盲目の少年が主人公である。目が見えない代わりに未来を少しだけ予知することができた。最初はそれを公言していたが、誰それが死ぬと言うと本当に死ぬため、恐れ、忌み嫌われるようになっていく。兄だけは味方になってくれるが、ダニエルは孤独な人生を歩んでいく……

正編は、絵柄は思い切り少女漫画だが、北イングランドを舞台にしたこと、何かの伝承文学のような筋運び、超能力者の存在、不幸になる主人公と、のちの曽祢まさこを彷彿させる要素は満載である。ただし、コメディパートはない。現在の基準からすると、キャラクターがやたらに大仰に泣いたり叫んだりするのがやや障るが、時代や掲載誌の傾向を考えれば、致し方ないところだ。

2の方は正編から16年経って、絵柄も大きく変化し、現在のタッチに近い。ストーリーもより洗練され、キャラも落ち着きを増し、安心して読める。一応、ダニエルが前向きに生きていこうとしているところで終わるため、きちんと完結している。続編を望むファンもいるようだが、この話はこれで終わりでいいと思う。



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