鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「彼は羊を被った狼」

  • 鳥原習「彼は羊を被った狼」(一迅社

2016年11月25日刊。鳥原習の初連載作品かつ初単行本と思われる。

月森真尋は犬飼朔太と付き合っている。朔太は人間の容姿をしているが狼男で、興奮すると耳が出、獰猛な狼男に戻り、言葉での制止はほぼ通用しない。ただし真尋は剣道部で喧嘩は朔太より強いため、大事には至らずに済んでいる。周囲に狼男であることがバレないよう、真尋は朔太に訓練を施すが、真尋のことが好きでたまらない朔太は、真尋にときめくたびに変身するのを制御できずにいる……

というのが粗筋。鳥原習の最大の特長である「女の子がかわいい」は既に本作で達成されている。狼男でありながら腕力で真尋に負ける朔太は少々情けなくもかわいい。朔太が狼男であると知っても怯えもせず、興奮しないようにするには? と対応策を考えるあたり、冷静といえば冷静だし、頭がいいといえば頭がいいが、相当にヘンな性格である。

後半は、朔太が幼少期に親から受けた虐待など、重たい展開もあるが、真尋の朔太への強い思いがすべてを吹き飛ばす。後味の良い作品だ。

物語の冒頭で、朔太のことを「羊の皮を被った狼」だとちゃんと紹介しているのに、作品のタイトルが「羊を被った狼」なのがちょっと気になる。



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