紙の書籍は1999年9月1日、ビー・エス・ピー刊。電子書籍は2013年10月16日、太田出版刊。「コミックビンゴ」1997~98年連載作品。
ケンジは浪人中、妹の玉魚(たまお)は高校生だが、電車通学になったら痴漢の被害に頻繁に遭うようになり、それが嫌で学校に行かれない。父親は玉魚が風呂に入るとそれを覗きに行くような人間。母親は娘の不登校にも父の覗きにも何も言わず、具合が悪いと言ってパート仕事を休み、家事を放棄して寝る。
これ以上はヤバイことになると感じたケンジは、進学を諦めて玉魚を連れて家を出る。しかし、親の了解がなく保証人もいないでは、部屋を借りることも仕事を探すことも簡単ではなく、ようやくいわくつきのボロアパートを借り、仕事も始めるが、いろいろと行き詰る。ついに二人は肌を重ねてしまい……
何をやってもうまくいかない、お金がない、不遇、孤独、そういう状況に苛まれている二人が、抱き合うのは自然だ。せめて相手から求められている実感がほしいとか、つかの間の快楽に身を任せたいとか、他にやることがないとか、もろもろ事情はあるが。愛情とは別の次元だろう。血がつながっていなければいいのだが、この二人の場合は実の兄弟だから、その罪悪感が当人たちをさらに苦しめる。悪循環もいいところ。
誰か相談できる人がいれば、とも思うが、相談されても手助けをすることは容易ではない。両親が変わることはないだろうし、そもそも何か悪いことをしている自覚もないだろうし。
最後はハッピーエンドなのか。少なくとも、玉魚は前向きに生きられるようになったようで、それは良かった。