鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「オーケイ。」

2000年2月10日刊。短編集。「オーケイ。」「厳格なゴルフ」「走る理由」「セカンド・ゴロ」「岐路」「二百万ナッソー」の六編収録。

「オーケイ。」「厳格なゴルフ」はゴルフ、「走る理由」は陸上、「セカンド・ゴロ」「岐路」「二百万ナッソー」は野球が題材。ただし「二百万ナッソー」は、野球が題材だが、プレイを描いているのはゴルフでもあるので、ゴルフ2.5、野球2.5、陸上1とカウントすべきか。

面白くて、一気呵成に読んだ。「変な家」「変な絵」も面白かったから、久しぶりではないが、図書館で借りた本なので、紙の本をこんなに面白いと思って読んだのは久しぶりである。また、小説らしい小説を読んだ、とも思った。

スポーツ選手の心情を描かせたら海老沢泰久の右に出る人はいない。表題作は、ゴルフのマッチ・プレーで、本当はOKをしたくないのに相手の迫力に押されてついOKを出してしまう選手の話。「走る理由」は……

スポーツは、これはこうするのが正しい、これは間違い、と簡単に割り切れないことが多い。「オーケイ。」の相手選手は、確かに厭な相手に描かれているが、明確にルール違反をしているわけではない。だからこそ、ルールの範囲でやりかえした主人公も、悩むのである。「岐路」では、試合に勝つために出場するか、首位打者のタイトルを大事にして残り試合を欠場するか。優勝がかかっているのだから、当然試合に出るべきだが、タイトルを大事にしろという人の気持ちもわかるのだ。

試合運びの描写はわかりやすい。選手の揺れる心理の描き方がうまい。海老沢泰久は多作家ではなく、若くして亡くなられたのは残念だが、それなりに作品は残している。大半は読んでいるが、もう一度読んでみたい。



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