鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「イジらないで、長瀞さん」1

2018年3月9日刊。「からかい上手の高木さん」との類似性が指摘される作品。

本作の元作品はpixivで2011年から公開されているが、この時のタイトルは「長瀞さん」だった。2017年11月から「マガジンポケット」にて連載開始。この時に「イジらないで、長瀞さん」と改題。

従って、ナントカカントカ○○さん、というタイトルに関しては、「からかい上手の高木さん」の最初期のフォロワーということになるが、モテなさそうな男の子に可愛い女の子がちょっかいをかけ続ける、というスタイルは本作の方が先になる。ただしこのスタイルは、元をたどれば昔からいろいろありそうで、元祖とは言えないだろう*1。とはいえ、数多くの亜流がはびこり、ジャンルの一角を占めるまでになっている現在、「からかい上手の高木さん」と並ぶパイオニアであるとは言える。

「センパイ」はもてないし、コミュ障気味だし、特に何かを努力しているわけでもない。ある時なぜか長瀞さんというちょっと可愛い子にタゲられ、以後、日々長瀞さんにイジられることになる。「センパイ」は最初はイヤだったが、だんだん長瀞さんと話をすることがイヤでなくなっていく。

努力しないのにもてることが重要。「こんな風に可愛い子に距離を縮められたい」「自分は『センパイ』よりはマシ」。ある意味、男子の夢であろう。

なお、敢えて「イジる」と書いたが、虐めに近い部分もある。初めて本作を読んだ時はイヤな気になり、読む気をなくしてしまった。今回改めて読み直してみると、似たようなパターンの作品を読み慣れたせいか、そこまでイヤな感じは受けなかった。

途中、知り合ったばかりの男子が(長瀞さんと仲良くなろうと)いろいろ攻め込んでくるのに対し、「センパイ」に対するようにサディスティックに言い返すのかと思いきや、全く興味なさげに流すのを見て、長瀞さんの気持ちは(読者には)はっきりわかったし、一巻最終話では「ご褒美です」と言って頬にキスする。これで「うれし恥ずかし恋愛ドラマ」に完全にシフトチェンジした。読者との距離の縮め方がうまい。

からかい上手の高木さん」は全20巻で完結。本作は来月20巻が出る。

*1:「愛と誠」(1973~1976年)では、美人で秀才で金持ちの早乙女愛が、不良の孤児・大賀誠に一方的に恋する物語である。当時小学生だった自分は「よりによってなんであんな男に」とか「オレもこんな女子に言い寄られたい」とか思い、悶々としていたものである。もし愛が岩清水弘と付き合うようになったら、なんとも思わなかっただろう。