鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「愛才」

単行本は2000年2月1日刊。文庫本は2003年12月1日刊。「初の書き下ろし長編」と銘打たれているが、小説としては「鎌倉ペンション物語」「ヴァンカンサン・結婚」に次いで三作目。

蔵書の再読と言いたいのだが、このような本を持っていたことすら記憶になく、中身は全く知らない。つんどくだったのだと思うが、そもそも今回の大河ドラマ「光る君へ」を見るまで大石静になど興味がなかったはずで、なんで買ったのかも謎。古書ならまだわからなくもないが、新刊で買っている。

それはともかく。

物語は森本という男の視点で語られる。森本の妻、奈子は夫のことを「おとうさん」と呼び、性交を拒否。一方、奈子は水野という役者に恋をした。これまでにも恋人(愛人?)がいたことはあったが、奈子は水野に本気で惚れ込み、入れあげるようになった。この破滅的な恋の行方は……

既婚者なのに別の男を好きになること、その存在を夫にあけすけに話すことまでは理解できるが、夫との肉体的な接触を拒否するところは納得がいかない。嫌いになったのではなく、依然として愛しており、生涯を共にするつもりでいるのに。

物語の終盤、水野は破滅するが奈子は破滅せず、新しい恋をする。語り部の森本は、いずれ壊れる気がする。それとも、もうとっくに壊れているのか?


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