単行本は2007年12月刊。文庫本は2010年5月14日刊。連作短編。蔵書の再読のはずだが読んだ記憶がない。石持作品をつんどくにするはずがないから、忘れたということだろう。おかげで衝撃のエンディングもちゃんと衝撃を受けた。
石持浅海は、「人柱はミイラと出会う」や「BG、あるいは死せるカイニス」など、現実にはあり得ない文化・風習や生物が存在する世界を描いたことがあるが、本作ではついに宇宙人が登場。宇宙人ではなく、地球で生まれた種なのかも知れないけど。
この生物は人間の生命力をエネルギーにしている。意図的に人間のエネルギーを急激かつ大量に吸えば死に至らしめることも簡単にできるが、ゆっくり優しく吸えば余剰カロリーを消費してもらえるわけで、人間の側にもメリットはある。相手が自分の身体に触れ、そのように吸っている時、その手は温かく感じるという。
余剰カロリーの消費だけでなく、興奮や動揺している時に少しこれをしてもらうと、冷静になれるという側面もある。そのために登場人物は目の前で殺人事件が起きても慌てず騒がず、冷静沈着に行動できるというわけ。
それにしても最終話はこういう展開になるとはね。「やられた」としか言いようがない。そして、とても温かい気持ちになるのだった。
なお、驚くべきことに、Amazonで本書が見つからない。マーケット・プレイスにも取り扱いがない。だからさっさと電子化しろというのだ!