1981年12月1日刊。古い本だ。執筆時、矢野は69歳。世界中の数学者との交友を描いたエッセイ。
蔵書の再読。購入したのは1984年7月6日、大学生の時だ。
僕らは矢野健太郎の名をまず大学受験向けの数学の参考書で知る。今はもう書店には並んでいないが、僕らの時代は「解法のテクニック」「解法の手引き」は数学のベストセラーだった。
本書を読むと、アインシュタインをはじめ、世界のトップレベルの数学者と交流があったことがわかる。それだけでも本人のレベルの想像がつくというものだが、もうひとつ、多数の論文を発表していることが窺える。その上、偉い先生の著わした数学書を翻訳したとか、学習参考書を書いたとかいう話が随所に出て来る。いったいなんでこんなに大量の文章を書くことができるのか。そのパワーは恐ろしい。
ところで、名前も知らない人のエピソードを聞いても興味がわかないものだが、本書にはエリー・カルタン、アンドレ・ベイユ、ニコラス・プールバキ等名前だけなら知っているという数学者が何人もいる。これらの名前をどこで知ったのかと言えば、学生時代に読んだ「大学への数学」に連載されていた淡中忠郎先生のエッセイだ。いろいろとつながっているのだ。

