1984年6月15日刊。「ゆかいな数学者たち」同様、世界中の数学者との交友を描いたエッセイ。
蔵書の再読。購入したのは1984年7月6日。
登場する数学者が「ゆかいな数学者たち」より若い人が多くなってきた。また「私・矢野健太郎」の部分も長い。なんなら自分のことだけを書いた自叙伝を出してくれてもよかったのに。
面白いと思ったのは、みかんを4つずつ6人に配る場合、4×6が正しいのか、6×4が正しいのか、と訊かれた矢野先生が、「どっちでもいいんじゃないですか」と答えた、というエピソードが盛り込まれている点である。ネットで定期的に騒がれ、侃々諤々の意見が飛び交い、何の結論も出ないままいつの間にか沈静化し、時間が経つとまた紛糾する問題だが、40年以上も前に矢の先生が「どっちでもいい」と答えたことは特筆に値する。
ただし「ほら、矢野先生も、どちらでもいいとお考えだ!」勢にも注意を促したいことがある。矢野先生は、4×6と6×4が同じ意味だとは言っていない。配り方は二通りあって、4×6と6×4は配り方が異なるが、どちらの配り方も正しいとおっしゃっている。「どちらも同じ意味」ではないのである。
私は、標準的な考え方は、一人4個ずつ6人に配るのであるから、4[個/人]×6[人]=24[個]とすべきであると考えるが、問題なのは、学校の先生が6×4に×をつけ、減点してしまう点にあると思っている。減点する必要などないのだ。

