以前にも取り上げたことがあるが、再読して改めて名作だと思った。
前回は、五頭が三四郎のことを認めているところに感動すると書いたが、三四郎も五頭のことを認めているのは、ドリームチームの旗揚げ公演で五頭がスノウマンに惨敗した時、河口に「あいつは日本一のスープレックスの遣い手だった」と言っている。
志乃と三四郎の仲がいいのも楽しい。単に仲がいいだけではなく、志乃が三四郎の性格をよく理解しているところがいい。
作中、三四郎や五頭らの年齢は正確にはわからないが、三四郎は27~28歳、五頭は31~32歳と思われる。本間ほたるは高校三年生だから18歳だろう。つい最近ネットで30歳の男と18歳の女の間に恋愛が成り立つかどうかで話題になっていたから、このカップルの年齢差は興味を引いた。漫画の展開上はあまり不自然には感じないが、冷静に考えれば、ほたるが五頭を好きな気持ちは大人への憧れのようなもので、恋愛とは違うと思うし、五頭がほたるに恋愛感情を抱くのは「ええー」と思う。その後二人は結婚し、仲良く生活していることを知ってはいるのだが。
通して読むと、名作だけに、話のねじれが気になる。それは、途中でいつの間にか「打倒赤城」に目標がすり替わったことだ。
本作のテーマは「インディー団体がいかに生き残っていくか」のはずで、実際、三四郎がドリームチームに参加した際に「第一の目標は借金の返済」とはっきり言っている。もちろん利益を上げるためには客を集めなければならず、ではそのためには……となるわけだが。
五頭は赤城に壊された上にFTOを追い出され、赤城に対する恨みはあろうが、それは「新団体を作ってFTOより大きくする」ことであり、赤城を痛めつけたいわけではない。かつての僚友・柳が赤城と対戦し、再起不能になるところも見たが、だからといって三四郎がその復讐を買って出るいわれはない。
赤城はデビュー後シングルで4人に負けており、その後は現在まで不敗。負けたのは三四郎、五頭、柳、田中で、三四郎以外の三人には復讐を果たしている。三四郎にはまだ。その上赤城の憧れの女性であった志乃と三四郎は結婚したわけで、赤城の側には三四郎に対する強い恨みがあったと思われる。しかし、三四郎はそうではない。
そもそも復帰のきっかけが赤城に自分のプロレスを否定されたから、とか、自分が地上最強と思っている三四郎にとって、最強を自称する赤城は許せなかったとか、理由はあろうが、薄弱であるように感じられる。リングリーダーを吸収し、田中プロレスやプロ柔道の残党も受け入れたドリームチームはかなりの大御所になっており、団体内でも対戦カードには不自由しない。こんぴらプロレスなど友好団体もある。今は地道に地方を回って実績を作るべき時期だろう。
まあ、観客が増えた、借金が減ったと書いてあっても読者にとっては「だから何?」なわけで、漫画としては悪役の赤城を倒す方向にシフトせざるを得なかったのだろう。