鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「殺人者」

  • 曽祢まさこ「殺人者」(夢幻燈コミックス)

殺人者 (夢幻燈コミックス)

殺人者 (夢幻燈コミックス)

Amazon

2013年8月10日刊。50ページ。

貴和の母は、おしゃれをすれば十分きれいなはずなのに、いつも野暮ったい恰好をしている。ある日、外出先でたまたま見かけた母はとてもきれいな容姿だった。浮気を疑う貴和だったが、真相はそんな生易しいものではなかった……。

タイトル通り、母は常習的な人殺しだったわけだが、人を殺しておいて、何の良心の呵責も感じていないのも恐ろしいし、真相を知った娘に対し、バラすならあなたも殺すと淡々と告げるのも恐ろしいし、貴和にとっては、そのサイコパスの血が流れているのが恐ろしいし、これまで何十人も殺して一切手がかりを残してこなかった母の行為を見抜いてしまった能力も恐ろしい。曽祢まさこらしい佳作である。

先日感想を書いた「顔のない同級生」もそうなのだが、短編ひとつで単行本にできるのは電子書籍のいいところではあるが、普通の単行本かと思って購入すると「これで終わり!?」と驚く。確かに安くはある。ただ、50ページと、通常の単行本の1/3~1/4の内容であることは、もっとはっきりと告知すべきだろう。Amazonのレビュー欄でも騙されたかのような感想が目につく。もったいないと思う。