鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

石持版黒後家「Rのつく月には気をつけよう」

単行本(新書版)は2007年9月刊。文庫本は2010年9月5日刊。連作短編集。「Rのつく月には気をつけよう」「夢のかけら 麺のかけら」「火傷をしないように」「のんびりと時間をかけて」「身体によくても、ほどほどに」「悪魔のキス」「煙は美人の方へ」所収。

湯浅夏美、長江高明、熊井渚の三人は学生時代からの飲み仲間。長江の家で頻繁に飲み会を開いている。毎回ゲストを一人招いて4人で飲むのが定番だ。ゲストはゲストは飲み会ネタのつもりで、自分に起きた不思議な出来事や悩んでいることなどを話すと、メンバーはそこに隠された謎をズバリと解いてしまう……

安楽椅子探偵ものであるが、真っ先に感じたのは、アシモフの「黒後家蜘蛛の会」だなあ、である。特定のメンバーが毎回会食を開いており、そこに持ち込まれた謎を解く、というスタイルはアシモフ博士を開祖とし、今日では一つのジャンルを築いているように思われる。

飲みの場での話だから、殺人だとか、強盗だとかいった物騒な話にはならない。本作においてはほぼ恋愛相談である。実は最終回において、そういう意味で本作は恋愛ミステリーの様相も呈している。

率直に言って一話から六話までは、少々無理しているな、と思わなくもない。表題作、夫婦の倦怠期だったかも知れないが、家を建ててしまったのだ。これから長いローンの返済が始まる。そんな状況で夫の死を願うはずがない。仮に愛情が醒めていたとしても、とにかく元気で働いて借金を返してくれ、だけを願うはずである。「身体によくても、ほどほどに」は可能性を吟味している場合ではなくて、「彼が身元調査をしているなんて、考え過ぎだよ」と即座に言ってやるべきではないか。

しかし最終回はガラリと様子が変わる。ここで、これまで読者が謎だと思っていなかった大きなミステリーが解かれることになる。その爽快感は格別だ。これまでの六つの話は、第七話を効果的に演出するための前菜だったとすら思えて来る。

なお蔵書の再読、と言いたいが、部屋のどこかにはあるのだろうけど見つからないから再購入した。全く覚えていなかったため、最終話もちゃんと衝撃を受けた。