- 原田ひ香「人生オークション」(講談社文庫)
2011年10月単行本刊。文庫本は2014年2月14日刊。表題作および「あめよび」の二編所収。
「三千円の使いかた」とはガラリと違う内容だが、どちらも心に沁みる話でとても引き込まれた。
表題作は、不倫し、離婚し(され)た無職のりり子と、その姪で、就職活動がうまくいかずフリーターを続ける瑞希が、りり子の膨大な荷物を片付けながら売れそうなものを片っ端からネットオークションで売って小金を得る、その過程で少しずつ癒されていく話。
「あめよび」は、美子と輝男は相思相愛の仲良しカップルで、美子は結婚したいとたびたび輝男に訴えるが、輝男は誰とも結婚したくないといい、結局美子は7年付き合った挙句に別れ、その直後に知り合った人と結婚して妊娠する話。
もうまとめると見も蓋もないが、これだけで十分面白い話である。りり子も瑞希も、自分が他の人のように「普通」でいられないことに引け目を感じており、さらに周囲から「一人前ではない」と見られることに小さく傷ついてもいる。一方、文学という共通の使用を持ち、永井荷風や谷崎潤一郎の話で盛り上がったりする。
オークションへの出品を何度も繰り返すうちに、写真の撮り方やコメントの付け方などがどんどんうまくなっていくところがリアル。一方、出品まではさほど難しくないが、落札されたあと、ていねいに梱包して送るというのはかなり手間のかかる作業ではないかと思われる。実際、「しあわせは食べて寝て待て」のすずさんは、司が家を出て行ったら、発送ができないからといってネット販売をやめてしまった。それができるりり子は、実は結構有能な人間なのではないかと思われる。
解説を書いている斎藤美奈子によれば、登場人物には「世代」の特徴がはっきりと顕れているという。気付かなかったが、言われてみればまさにその通り。作家はそこまで綿密に計算してキャラクターを造形しているのか? 評論家はそこまで読み解くものなのか?
「あめよび」では、結婚する・しないで二人がたびたび揉める描写が繰り返される。自分は恋愛と結婚は別物だと思うので、恋愛の先に必ず結婚がなければいけない、そうでないならばそれは遊びで不誠実だとする考え方には組しない。恋愛はしたいけど結婚は無理、という人はいるだろうと思う。
そういうカップルのすれ違いを描いただけで興味深いが、斎藤美奈子は、輝男は在日コリアンだったのではないかという。輝男が結婚したくないと言ったのは、それが原因なのか(自分が結婚に向いていないのではなく、美子が、あるいは二人の子が、差別されたりいじめられたりするのが嫌だったということか)。斎藤は「輝男の名字と<漢字を三文字>にピンと来ない人は、近現代史を学び直したほうがいい」と書くが、そう突き放さず、三文字の内容を解説してほしかった。
リンク
- 『人生オークション』『あめよび』原田ひ香(2025-03-31、チェルミーの読書日記)
- 『人生オークション』『あめよび』原田ひ香(2025-02-07、うずまきぐ~るぐる)

