鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「『空手バカ一代』の研究」

  • 木村修「『空手バカ一代』の研究」(アスペクト)

1997年6月19日刊。蔵書の再読。

内容をすっかり忘れていた。よくありがちな「空手バカ一代」は嘘ばかり! 的な検証ものかと思ったらそうではなく、かつて本作に夢中になった著者が、事実にも触れつつ、話の内容をまとめていくという、「空手バカ一代」側から見ると極めて良心的な本である。かつて「少年チャンピオン」に連載された「ゴッドハンド」がなぜたった6回で中止になってしまったのかについて触れていないのは、フェアではないとは思ったが……

ところで「空手バカ一代」は、中盤を過ぎてからは大山倍達より弟子たちに比重が移り、とりわけ芦原英幸が主人公格で描かれることに大山はたびたび苦言を呈していたが、梶原一騎は聞き入れず、だんだんと二人は袂を分かつようになった……と言われている。著者は、大山の言い分もわかるが、梶原の立場で、作品を盛り上げるためには致し方なかったのだろう的にまとめてあるのが少々納得が行かない。

そもそも大山が苦言を呈したというのが自分には信じられない。何が気に入らないのか。自ら大会で優勝したりプロレスラーと戦ったりした時はいいけれど、ある年齢を過ぎ、現役ではなくなっていけば、格闘家としての大山倍達について書くことはなくなる。が、極真会館の館長として、強い弟子を育てているわけで、それぞれの弟子の強さを描けば描くほど、師である大山の偉大さが実感させられるわけだから、これ以上ない話の組み立て方だと思うが。

苦言を呈するとすれば、取り上げる弟子がフェアではないことだっただろう。梶原一騎にしてみれば、話の整合性もあり、そこまで気は遣えない、というかも知れないが、名前が出て来るかどうかで弟子の集まりが変わってくるとあっては、取り上げられる側からすれば気にしないではいられない。結果、極真内部に梶原一騎をめぐって派閥のようなものができてしまったのは、のちのち禍根を残すこととなった。

もうひとつ、この本は梶原一騎の逝去(1987年)後に書かれている。つまり「男の星座」も発表されているが、ほとんど参照されておらず(皆無ではないが)参考文献にもあげられていない。「空手バカ一代」の内容を上書きしようという壮大な(?)作品で(未完に終わったが)、特に有明省吾の検証には「男の星座」でどのように描かれているかは大いに参考になると思うのだが。



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