- 松本葉「愛しのティーナ」(新潮文庫)
1992年10月1日二玄社刊。文庫本は1997年10月1日刊。蔵書の再読。本書は文庫を新刊で買ったようだから、約30年ぶりと言うことになる。
本自体が「エッセイ集」として紹介されているからここでもカテゴリーを「エッセイ」にしたが、自伝を含む11編の掌編小説集、の方が近いのかも知れない。ティーナことFIAT500(チンクエチェント)を購入した時のドタバタや、内田盾男にまつわる話は恐らくほぼ事実なのだろうが、彼女の友人として紹介されているジェシカとかドドのことなどは、どこまでが実話なのかわかったものじゃない。そもそも人物そのものが実在するのかどうか。「モロッコから来た男」や「おやすみ、ミンモ」などは、実話なのかも知れないが、創作として読むしかない。
という、なかなかファンタジー色の強い作品だ。そして、事実かそうでないかなどどうでもいいと思えるほど、哀愁と抒情性を帯びた文章なのだ。その魅力で読まされ、作品世界へ引き込まれてしまう。そうした読後感でいえば、明らかにエッセイの範疇をはみ出している。
ところで自分は、著者はイタリア人と結婚してイタリアに移住したのだと思い込んでいたが、そうではなく、イタリアに住みたい、と思ってイタリアに移住した時は独身だった。その時既に将来夫になる人と付き合っていたのかどうかはわからないけど、本書を読む限りは、そういうことではなさそうである。

