鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「伊太利のコイビト」

  • 松本葉「伊太利のコイビト」(新潮文庫)

1993年5月NTT出版刊。文庫本は1998年3月1日刊。蔵書の再読。

「愛しのティーナ」に続くエッセイ第二弾。新潮文庫的にはそういうことになる。初出の記載がないから想像だが、前作も今作も単行本書きおろしではなくどこかの雑誌に掲載されたものを本にまとめたはずで、掲載誌がそれぞれ異なるために別々の編集となったのだろう。話題はすべてイタリアでの生活だが、時系列的に言えば、FIAT500(チンクエチェント)を購入したのは本書の半ば過ぎ。つまり、購入前の生活も多々描かれている(前作ではFIAT500を購入するところから始まっている)。そして、イタリアでの生活にピリオドを打ち、日本に戻ってくるところで終わる。つまり前作と完全にかぶっているのだ。部屋に鍵を置いたままドアを閉めてしまい、消防署のお世話になった話は、前作に詳しいが、本書でも触れられている。

意外なのは、周囲の人のコイバナはいろいろ語られるものの、自身についてはまるで触れられない。そういうことには縁がなかったのかと思いきや、後半のあるエッセイの冒頭で「70歳になるイタリア人の舅は……」と始まり、舅? 結婚したんか??? と驚かされる。これまで様々な交友関係の知人が紹介されてきた。オットなる人はその中の一人だったのか、それともかたくなに記述を避けてきたのか……。いくらクルマに関するエッセイだからといって、別に恋に落ちた瞬間を描けとは言わないが、結婚することも結婚したことも一切触れられていないのはいっそ清々しい。

そして四年半の滞在イタリア生活を終え、「NAVI」に戻ったようである。著者のその転身に不思議はないが、イタリアが好きでフェラーリ狂で、フェラーリをデザインしている会社のデザイナーであるオット氏が、日本へ移住することに同意したのは不思議である。

ちなみに、「伊太利のコイビト」というのは、愛車FIAT500のことであって、オット氏のことではない(はずだ)。

松本葉の本はまだ持っていたはず。発掘したら読んでみよう。