- 石持浅海「届け物はまだ手の中に」(光文社文庫)
単行本は2013年2月刊。文庫本は2015年10月20日刊。初出は月刊「サスペリアミステリー」(秋田書店)2010年8月号~2012年6月号(隔月連載)。
石持作品は、一分の隙もなくきっちりと論理を積み上げ、推理を展開するところに特徴がある。数学の証明問題に似ていて、飛躍がなく、納得感はあるが、時としてくどい。そこまでいちいち言わなくてもわかるわい、と冗長に感じられてしまうことも間々ある。
第一章あたりではその癖がちょっと強めに出ていた。が、第二章に入った辺りから、一体何が起きているのだと気になって仕方なくなり、一気呵成に読み進めた。
楡井和樹は物語冒頭で江藤を殺す。倒叙だ。殺人事件の犯人を読者は知っている。これから事件を知った警察がいかに犯人にたどり着くか、犯人である主人公がいかに逃げ、追求をかわすのか。そういう話かと思うとまるで違う。まだ死体は見つかっておらず、警察は動いていない。
事件の翌日の日曜日、楡井は友人を訪ねる。友人はあいにくトラブル対応で手が離せないが、友人の秘書、妻、妹が歓待してくれる。いずれアヤメかカキツバタという美女であり、また、最初に友人の子が塀から落ちて大けがをしたかも知れないところを楡井が助けたことから、美女たちはみな楡井に感謝し、下へも置かぬもてなしをする。気分よく過ごせるところだが、楡井は、美女三人が三人とも嘘をついていることに気付く……
殺人事件そっちのけで、いったい何をやっているのだ、と思いつつも、楡井を囲む異変から目が離せなくなる。最後の真相は、それはないやろーと思いつつも、本当にそういうことが起きたら、案外そういうことになるのかもなーと、妙に納得する自分がいる。

