鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「わさび」2

わさび 第二集

わさび 第二集

前回の記事でタイトルを「古風な絵柄で上品なギャグ漫画」としたが、適切ではなかった。見た目に騙されるが割と下品なギャグもある。下品に感じさせなければ上品だといってもいいのかも知れないが。

登場人物は帯刀隆太郎(大学教授)、その妻・絹子(専業主婦)、息子・隆之介(初登場時は幼稚園生)、住み込みの手伝い・小原ふみの4人でほぼ完結している。一軒家に住み、自家用車は持っていない。絵で見る限りでは家の中は和室のみ。絹子は常に着物を着ており、隆太郎も仕事で外出する際はスーツを着ているが家の中では和服である。そして何より、お手伝いさんが(それも住み込みで)いる。

30年近くも前の作品だから、古いよね、という話ではない。もっと古い。ドラえもん、いやサザエさん並みである。が、ドラえもんサザエさんは初出の頃は時代を描いていた。異様にロングランとなる中で、最初の枠組みを変えなかったら時代とどんどん乖離してしまっただけである。本作は発表当時でも古い古い風景だったのだ。

戦後間もない頃はともかく、1990年代には「住み込みのお手伝いさん」は死語になっていたと思う。通いならばまだしも、住み込みで(プライバシーがまるでない状態で)仕事をすることを是とする人はこの時代にはもういなかったと思うし、そもそもよほどの資産家ならともかく、一介の勤め人にフルタイムの人を雇える収入があったとは思えない。

そもそも帯刀家は、妻は専業主婦で、子供は一人だけで、介護の必要な老人や病人がいるわけでもなく、連日連夜来客がひっきりなしというわけでもない。なぜお手伝いさんが必要なのか謎である。家は古く、かなり広いから、掃除は大変かも知れないが、絹子が遊び歩いていて家の用事をふみに全部押し付けているというわけではなく、料理も洗濯も針仕事も(一緒に)しているのである。暇でやることがないのではないかと思うが……。もっとも、電化製品が揃っているようには見えないから、やることなすこと、案外時間がかかるのかも知れないが……(まさか米はかまどで炊いている、とかではないよな)。


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