鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「江口寿史のお蔵出し 夜用スーパー」

2010年紙書籍刊。2016年に電子書籍化されている。

ちょうど10年前に本作を記事にした時(下記リンク参照)は、いろいろ言いたいことはあるが、一応前向きに評価していた。

今読み返すと、かなり下品なのが鼻につくのと、下品なだけならいいけれど、セクハラ描写は令和の世ではギャグにしてはいけないことだと思うようになった。まー時代だなー。

本書を最後に江口寿史の本は(新作は)買っていない。「ひのまる劇場」と「GO AHEAD!!」が電子書籍化されたら、速攻で買うのだが。

「江口寿史のお蔵出し」

1994年刊。その22年後の2016年に電子書籍化されている。

「寿五郎ショウ」や「江口寿史の爆発ディナーショー」の単行本化の際に、面白くないからと省いた作品や、単発であちこちに発表して書籍化されていなかった作品などを集めたもの。

面白くないことはない。特に「江口寿史の爆発ディナーショー」作品は、抜くことはなかった、同題の単行本に入れれば、よりバラエティに富んだ作品集になって、よかったんじゃないか、と思わせられる。

ただ、もう少し安価にはできなかったか、とは20年前は思った。現在は紙の本は絶版になっており、電子書籍のみ購入できる。kindle版は紙版より安いのが救いだ。


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「ふたり明日もそれなりに」5(完結)

  • すずゆき「ふたり明日もそれなりに」5(新潮社バンチコミックス)

大団円に向かってひとつひとつ話を畳んでいく巻。ほほえましいけど、特筆するほど意外な事件は起きない。強いて言えば、優弥の姉が里央の兄を見てコスプレさせたがるのは面白い。優弥と里央は結婚式は挙げないことにし、双方の両親もそれをすんなり認めるところは意外。

沙織は課長に告白。課長は独身なのね。だったら何も問題なし。

ゆんについては何も将来が暗示されないまま終わった。一方、武藤先輩にはいいことありそう!?

記念の写真を撮り、婚姻届けも出したが、新婚旅行の行き先はまだ決まっていない。

最終話のタイトルは「これからもそれなりに」。よいラストだ。


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「ゴルゴ13」5

内容

  • 帰ってきた標的
  • 殺意の交差
  • 白の死線
  • スタジアムに血を流して
  • 飢餓共和国

雑感

帰ってきた標的

依頼者は自分の上司であるところのマフィアのボスの殺害を依頼する。が、ゴルゴに教えたボスの移動ルートは替え玉のものであり、要はゴルゴに替え玉を狙撃させようとしたのだ。マンガン読者である我々からすれば、ゴルゴに隠し事をしてはいけない、素直に、ボスに扮した替え玉を狙撃し、ボスが死んだことにしてほしい、と依頼すればよかったのだ、と思うが、現実に、殺し屋を信頼しろと言われても難しいところだろう。なお依頼料は5万ドル(1800万円)だった。

殺意の交差

これまではもちろん、単行本が200巻を超える現在までを含めても、ゴルゴの最大の危機はこの時ではなかったか。ほんのわずかのタイミングで難を逃れたが、ゴルゴが死んでもおかしくなかったし、ゴルゴにはそれを防ぐことはできなかった。

白の死線

しょっぱなからピンチに追い込まれる。「イヌ!? まさか山に逃げ込んだとは考えまいと思っていたが……イヌを連れていたとは……くそっ、これではここで時間待ちとはいかなくなったぞ……」などと弱音を吐くのは珍しい。

狙撃する時に遠距離からスコープにターゲットを捉えていたのに、わざわざ近づいて(敵の反撃を許す距離で)撃った理由が不明。犯人をわからなくさせること、反撃を受けにくくすること、逃走のしやすさの観点から、狙撃はできるだけ遠距離からが鉄則だと思うのだが。

最後に依頼人を殺すのも謎。情報を流したということか?

依頼料は5万ドル。

スタジアムに血を流して

アマのトップ対プロ。もちろんアマチュアがゴルゴに敵うわけはないが、最初に相対した時、デイブがゴルゴのカフスなんかと飛ばしたりしないで心臓か脳天を狙っていたらやれたのではないか? それをしなかったのがアマチュアなのだろうが。

飢餓共和国

ナイジェリアの内戦に巻き込まれた一般女性が哀れ。この女性がなぜガボン共和国にいたのか、なぜ台風で定期便が欠航したからといって、次の便を待たずに飛行機の白タクに乗ろうとしたのかが謎。現地人と同乗することになり、それを嫌がって「この人たちを降ろして! お金なら出します」と言うものの聞き入れてもらえない。一見傲慢でわがままな行為に見えるが、振り返ればこの勘は正しかった。それならば自分が乗るのをやめればよかった。この女性の背景が一切描かれないため、あまり同情できない。


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「ゴルゴ13」4

内容

  • 査察シースルー
  • WHO?
  • 価値なき値
  • 魔笛のシュツカ

雑感

査察シースルー

依頼者(年輩の男性三人)が全員サンタクロースのコスプレをしているところがおかしい。正体を隠すためだが、無論、そのままではゴルゴは仕事を引き受けない、と言う。この駆け引きはちょっと見もの。依頼料は50万ドル。仕事を済ませたゴルゴを調査員が始末しようとして返り討ちに合う。

WHO?

ミステリー。大富豪の妻が命を狙われている。建物の中にいる限られた人物の中で、犯人は誰か? ゴルゴも神父を装って建物内にいる。刑事はゴルゴが犯人ではないかと考えるが……という物語。ちょっと設定にご都合主義なところもあるが、難しい政治がからんでいない分、わかりやすいのがいい。佳作。

価値なき値

強力な化学兵器を廃棄することになり、装甲車に積んで移動するが、金塊を積んでいると勘違いしたギャングが襲ってきて……

魔笛のシュツカ

同業者がかち合った事件。かちあうたびに殺しあっていたら、世の中からプロがいなくなってしまう。同業者としてのリスペクトをもって、そこはもう少しうまくやればいいのにと思う。

女の描き方が下手だなあと思うのは、恋人との結婚を父親に反対されたパミーナが、ヤケになってゴルゴに抱かれるという展開。さっさとジーノの許に行けばいいのに。ジーノと抱き合えば厭なことも忘れられるだろうが、ゴルゴに抱かれても空しさは増すばかりだろう。


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「江口寿史の爆発ディナーショー」

江口寿史の爆発ディナーショー

江口寿史の爆発ディナーショー

久々に読み返してみた。「週刊漫画アクション」に連載された作品で、当時、アクションは毎週買っていたので、巻末二色カラーのこの作品を毎週楽しみにしていた。が、とにかく載らない。落としまくるのもいいところで、載った回数よりも落とした回数の方が多いのではなかったか。

これがアクション本誌の中に挟まれる作品なら調整もできたのだろうが、巻末カラーだから代替のしようもなく、仕方なく? 落ちた時は編集者(恐らく)の手によって延々と4ページにわたって言い訳がなされるのだが、それが抜群に面白かった。完全に芸として昇華していた。だから、載ってもよし載らなくてもよし、くらいの感じで雑誌を手にしていた覚えがある。*1

単行本にする時はぜひこの「載らなかった時の埋め草ページ」もコンプリートしてほしいと思っていたが、当たり前だがそんなものはなく、一切の痕跡は消されているのだった。

ただ寄せ集めではなく、形式が揃っているせいか、通して読むと平均して質が高い。文春漫画賞を受賞するほどのものかといえば、疑問だけど。

前頁カラーのせいか、単行本はハードカバーで異様に高かった。これから買う人はkindleをお薦めする。


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*1:この「言い訳芸」は「パパリンコ物語」あたりから登場したものではなかったかと思われる。少年マガジンで「はじめの一歩」が今週も12ページしかない、と読者が怒るのは、一切の言い訳がないからだ。遅筆作家の担当編集者は言い訳芸を磨いてほしい。

「なんとかなるでショ!」

江口寿史のなんとかなるでショ!

江口寿史のなんとかなるでショ!

久々に読み返してみた。「月刊ASUKA」連載作品をまとめたものだが、原稿を落としたのはわずか一回だけで円満終了を迎えるという、江口寿史にしては奇跡とも思える作品となっている。そのせいか、作品はどれも粒がそろって安定している。正直なところ、「寿五郎ショウ」よりはるかに面白い。

あとがきによると「装幀から中の構成、文字のレイアウトにいたるまですべて自分でやった」とのことである。なるほどこれが江口のセンスかと思わせる。ただポケミス風の装幀はいただけない。これから買う人はkindleをお薦めする。


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