鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「紫式部日記」

  • 岡本梨奈「面白すぎて誰かに話したくなる紫式部日記」(リベラル新書)

2023年11月26日刊。書店の店頭に飾ってあって衝動買い。

大河ドラマ「光る君へ」を楽しんで見ているが、何しろ平安時代についても、清少納言についても紫式部についても予備知識がなさ過ぎる。なくても面白いが、あればもっと楽しかろう。そう思って手が伸びたが、タイトル通り面白い本である。

既に大河でやった時代については登場人物があの顔で思い起こされ、これからの部分については「ネタバレだな……」と思いつつ、「まあ、史実通りにやるとは限らないし」と思いつつ楽しんで読んだ。

ところで、著者は予備校の講師だそうで、当初はさらりと受け止めていたのだが、聞いたことがなかったからどんな予備校かとちょっと調べてみたら、「スタディサプリ」というオンライン予備校なのだそうである。しかも(チラとサイトを見た限りでは)授業はライブではなく、動画を(好きな時間に)見るというものらしい。そして授業料が恐ろしく安い。英語の教師には関正生の名もある。

オンライン予備校は、移動の時間がかからない、夜遅くなって親が迎えに行くという手間もかからない、近くに予備校のない地方の子でも格差なく学べるなど、メリットは多いだろう。これからはこういう学校が増えていくのかも知れない。ただ、この方式は生徒にやる気があって初めて成り立つもの。そして塾でも予備校でも、「いかに生徒にやる気を出させるか」が最大の仕事ではないかと考えると、いろいろと疑問もなくはない。

単科コースがあるなら、岡本先生の古文の授業は受けてみたいかな……



漫画・コミックランキング

「ミステリと言う勿れ」14(新刊)

  • 田村由美「ミステリと言う勿れ」14(フラワーコミックスアルファ)

2024年6月10日刊。初出は月刊フラワーズ2023年10月号~12月号、2024年4月号、6月号。6月号掲載作品がもう単行本になっている。

エピソード18は3話で完結。池本が活躍。久能はいないが、心の中で久能に問いかけることでイマジナリー久能を登場させ、解決に結びつけていく。前巻の風呂光もそうだが、進化・成長の跡が見られる。

一方、その間久能はチェスをしているのだが、これが何かストーリーに関係あるのか真面目に読んだが全く関係なかった。そうでなくても入り組んでいてわかりにくいのに、このエピを挟む意味があったのだろうか。

12・13巻で登場したantがここでも登場。いったい誰なのか、事件にどう関係しているのか。

「なんでもない日」は小品だが、示唆に富んでいる。鳴子巽と天達先生はつながっていた。

エピソード19はライカと二人で過ごしている時に謎に巻き込まれていく。ライカとのバディ物は大好きだが、謎が深まったところで終わり。こういう切り方をされると辛い。



漫画・コミックランキング

「清須会議」

2012年6月27日刊。

映画は何度か見て抜群に面白かった。原作本を見つけたので読んでみた。脚本・監督と同一人物だから当然ではあるが、同じテイストの作品で違和感はなかった。あまり小説を読んでいる気がしなかった、とも言える。

滝川一益を待って会議を一日伸ばす間、映画では駆けっこをするが、本作ではイノシシ狩りになっていた。イノシシ狩りを映像化するのは大変だろう。単なる駆けっこでも十分に織田信雄の間抜けさ加減が出ていた。

まあ「どうする家康」を見た今、織田信雄はそんなに間抜けじゃないという気持ちがあるので、このような間抜けな描写はステロタイプに見えてしまうが、それは言いがかりのようなものだろう。

「魔物カフェ」

2023年1月6日刊。53ぺージ。

激務に疲れ、HPの残量わずかなOLが、帰宅途中に魔物(まも)カフェを見つける。そこには、どうやって集めて来たのか、スライム、コカトリスケルベロスなどがいて、触れあえるのだ。いわば猫カフェの魔物版だ。そこに通い詰めて癒されていくという話。

自分はこの分野には詳しくなく、「キタ――(゚∀゚)――!!」みたいな感じにはならないのだが、読んでいる側も癒される。1とあるから2巻もいずれ出るのかな。



漫画・コミックランキング

「千才姉妹」

2024年2月23日刊。

紺野さんは見かけは若い女性だが、実は1000歳の妖狐だった。しかし100歳を過ぎて人間界に年上がいなくなり、1000歳になった今、動物でも年上はいない……とちょっと孤独に感じていたところへ、たまたま知り合った森山という魔女は1003歳だった! というわけで、紺野さんが子どもの心に戻って、三歳「も」年上の森山に思い切り甘える話。

紺野の「お姉ちゃん」呼びもかわいいし、当初は塩対応でありながら徐々にほだされていく森山もかわいい。



漫画・コミックランキング

「奴隷の王」

  • ヤギ君「奴隷の王」

2024年2月29日刊。「殺戮の王」の番外編。最近はスピンオフという言葉が使われることが多いが、本作はちゃんど「番外編」と銘打ってある。

シュヴァの片腕、ハルシュタイン帝国元騎士団団長・甲鉄のサイガの若き日のエピソード。本編は結構殺伐とした物語だが、最後に少しだけほのぼのとした話で救われる。



漫画・コミックランキング

「舟を編む」

2011年9月20日刊。初出は「CLASSY」2009年11月号~2011年7月号。「CLASSY」はファッション雑誌(月刊誌)。小説誌ではなくそんな雑誌に掲載されていたのか!

映画は二回見たが原作の小説は読んだことがなかった。たまたま書店で見かけたので購入。考えてみたら、三浦しをんの作品は、本作以外にも「まほろ駅前多田便利軒」「神去なあなあ日常」など親しみが深いが、小説はまだ一冊も読んでいないのだった。

映画は割と原作に忠実に作られていた模様で、違和感なく読み進められた。とにかく、ほとんどすべてのセリフが(脳内で)松田龍平小林薫加藤剛オダギリジョー黒木華宮崎あおい池脇千鶴の顔と声で進むのに疲れた。この中で、池脇の演じる三好麗美だけは原作から乖離している。美人ではないはずなのに、よりによって池脇という超美人を当てた制作者の意図は不明。

ただし、改めて読み進めると、映画では恋愛劇に比較的スポットを当てていたなと思う。本作でも馬締くんが香具矢に恋文を書くところはひとつのハイライトではあったが、全体としては辞書を編纂することそれ自体により多くの文字が費やされていた。

この辺り、語義の説明や辞書編纂の方針などは、文字で説明すればある程度はイケルものの、画像でそれをやると間延びしてしまうから、エンタメ性を重視してそのように舵を切ったのだろう。そのため、映画初見では、肝心の辞書の編集方針がはっきりしないと不満を持ったが、本作を読んだことでその不満はきれいに消えた。

だからこそ、辞書を完成させるためにどれだけの時間と労力をつぎ込んだのか、映画よりもいっそう迫って来た。だから、完成目前で松本先生が亡くなられた時などは、わかってはいたけれど涙が止まらなかったし、ついに完成した時も嗚咽が止まらなかった。

映画で印象的なラストシーンは、映画独自のアレンジだったようだ。あれも宮崎あおいの表情と声があってこそのもの。映画はあれでよかったし、小説は小説であれがなくてよかった。