鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「酒井美羽の少女まんが戦記」3

  • 酒井美羽「酒井美羽の少女まんが戦記」3

2025年12月25日刊。「ミステリーボニータ」2024年6月号~2025年11月号掲載。

現代でもそうかも知れないけど、当時の、しかも少女漫画界隈だと、学生時代にデビューしてそのまま作家に、という人ばかりだったようだ。だから社会人経験が少ない。仕事で人と付き合うというのがどういうことか知らないし、契約という意味がわからない。その上、人付き合いがそもそも苦手という人が多い。

そういう人がアシスタントを使っていくのは大変だっただろうな、と思う。そういう部分をカバーするのが編集者の役目では、という気もするのだが、「編集者との付き合い方」もまた苦労のタネだったりする。3巻では、プロとしてスタートを切り、仕事は順調で人気も出、単行本も次々出る中で、こうした問題に振り回される様子を描いている。なかなか部外者にはわからない、しかし業界関係者にとっては切実な話題と思われる。

小林まことの「青春少年マガジン」や永井豪の「激マン!」、平松伸二の「そしてボクは外道マンになる」などに共通する話だが、なぜ出版社は漫画家が睡眠時間を削って作画する、そういう状況を何年も続けることをよしとしていたんだろう。そんなことを続けたら身体がガタガタになり、精神も病んでいくとは思わなかったのか。業界自体が新しく、10年先20年先が見通せない中で、今頑張るしかない、と編集側も思っていたのか。

第19話で、現在の著者が、当時の自分に、「灰皿片付けてとっととネームに集中しろ!」と言っておられるが、私は「とにかく少し寝よう」と伝えたい。ゆっくり寝なければいい案も出て来ない。一回くらい落としたってかまわないではないか――と。

「酒井美羽の少女まんが戦記」2

  • 酒井美羽「酒井美羽の少女まんが戦記」2

2024年5月25日刊。「ミステリーボニータ」2022年12月号~2024年4月号掲載。

鈴木光明という人の名は知っていたが何をしている人か知らなかった。なんなら少女漫画家だとは知っていたが、作品を読んだことがなかった。

少女漫画家の新人発掘および育成にこんなに長期にわたり、こんなに熱心に力を尽くして来られた方だったとは……恐ろしい子!

作者の鈴木先生愛があふれていてそれだけでも読む価値はあるが、鈴木先生のすぐそばにいて、長年アシスタントを務めた人を抱き込んで(?)詳細な取材を敢行し、記録に残したことは大きい。こういう作品は後世に残さなければいけない。



漫画・コミックランキング

「酒井美羽の少女まんが戦記」1

  • 酒井美羽「酒井美羽の少女まんが戦記」1

2022年10月14日刊。「ミステリーボニータ」2020年12月号より連載。

物心ついた時から漫画は読んで来て還暦を過ぎた今でも熱心に漫画を読んでいるが、少女漫画には縁がない。まあ縁がないは言い過ぎで、弓月光もあだち充も読んできたし吉田秋生も野間美由紀も好きだ。「ガラスの仮面」も(1巻だけ)読んだ。が、申し訳ないが酒井美羽と言われても作品を読んだことがないし絵柄も思い浮かばない。

この作品はtwitterで本人が呟いているのを見て知った。少女漫画版アオイホノオかと思い、とりあえず1巻を読んでみたのだが、これが抜群に面白い。

作者はまだ独り立ちできず、山田ミネコのアシスタントとして仕事をし、いろいろなことを教わっていく。その合間に多くの人気漫画家にアシスタントとして出向くのだが、その時のエピソードを面白おかしく描いている。従ってそれら作家をよく知る読者なら「あの先生がこんなことを」と面白く読めるのだろうが、山田ミネコと言われても青池保子と言われてもわからない自分が、それでも面白く読めたのは、「人間を描くのがうまい」からと、有名漫画家のエピソードを紹介しつつ、その作家とのやり取りの中で自分が何を得たか、が描かれているからではないだろうか。

「戦国小町苦労譚」20(新刊)

  • 原作・夾竹桃、平沢下戸、作画・沢田一「戦国小町苦労譚」20「一乗谷の残照」(アース・スターコミックス)

2026年6月12日刊。「コミックアース・スター」2025年11月~2026年3月掲載。

19巻の感想の最後に「次はいよいよ浅井・朝倉戦」と書いた。そして確かに浅井・朝倉戦が描かれてはいるが、滅んだのは朝倉のみ。「残るは浅井」で終わる。武田が滅び、上杉が臣従し、いよいよタイムリミットが目前だが、いやに引き延ばすなあ。

奇妙丸は信長の後継者として多くの戦に参戦するが、いまだ手柄を立てていない。最前線には投入されないからだが、本人は焦っており、朝倉攻略の際に「大獄城に奇襲をかけてはどうか」と静子に相談する。静子はさらに「雨の日がいい」とアドバイス。信長も同じことを考えていたが、信長よりも先に大獄城を攻め、信長に褒められる。

その後、信長は、「朝倉は今宵必ず撤退する。その背後を突く」と諸将に伝える。「今宵必ず」と。が、彼らは上様がそこまで正確に敵の撤退を見抜けるものかと出陣に躊躇する。信長の真意を図りかねた明智光秀は静子に相談し、静子は理由を説明。光秀だけに説明したのは、光秀だけが上様の意に沿おうとしたから……。結果、信長が出陣した時に従ったのは明智隊だけだった。

信長は、これまでもいちいち説明せず突然出陣し、織田軍はそれに従うことを要求された。それができる者だけが残ってきたはずなのに、ここへきて信長の指示を疑い、出陣の準備を怠るとはどういうわけか? 「理由はわからないが、上様が出陣と言ったら出陣じゃあ~」とは考えなかったのであろうか?

また、これで明智は大手柄を立てたことになる。史実では本能寺の変が数ヵ月先に迫っているが、この後光秀は何を考え、どう動くのだろうか?

「ゆうべはお楽しみでしたね」1

  • 金田一蓮十郎「ゆうべはお楽しみでしたね」1(ヤングガンガンコミックス)

2015年3月25日刊。「ヤングガンガン」にて2014年13号(6月20日発売)より月一で連載中。既刊12巻。

主人公のさつき・たくみは書店勤務、22歳、男性。祖父から譲り受けた一軒家に住む。オンラインロールプレイングゲーム「ドラゴンクエストX」に嵌まっている。ハンドルは「パウダー」。

おかもとみやこはネイルサロン勤務、女性。「ドラゴンクエストX」のヘビーユーザー。ハンドルは「ゴロー」でパウダーとは仲良し。

みやこはアパートの更新期限が迫っており、職場から遠いこともあって引っ越し先を探していた。それを知ったたくみは、家が広くて部屋が余っていることからルームシェアを提案。みやこは喜んで受け入れるが、引っ越すまで二人は会ったことがなく、互いに相手を同性だと思っていた……

ひょんなことからいとも簡単に同棲が始まる漫画は多いが、本作はルームシェア。行き場がないことからとりあえず同居を開始するが、意外と順調に生活が始まり、互いに相手に気持ちを寄せるようになる。

冒頭数ページはゲーム内のキャラクターで話が進み、これはゲーム漫画なのか? このキャラで読み進めるのはつらいな、と思ったが、すぐに普通の人間が登場した。線が細くて絵がきれいだし女の子がかわいい。この絵には見覚えがある……と思ったら「ラララ」の作者だった。

たくみは、みやこが女性であることを意識し、同居人としての節度を守ろうと努力しつつも少しずつ惹かれていくところ、みやは元カレと別れた直後ということもあり、たくみのことはさほど意識していなかったが、徐々に意識するようになっていくところ、そうした描写がうまい。

とはいえ、いくらネットで知り合ったとはいえ、一緒に暮らそうというのに一度も事前に会わないのはさすがに現実感がない。「今晩泊めて」くらいならともかく、家賃の支払いのことを考えても、身分証明書と緊急連絡先(つまり親)くらいはあらかじめ示させるべきだろうし、みやこにしたって下見なしに引っ越すなんてギャンブルもいいとこ。下見に訪問する日に急にたくみに用事が入り、鍵を開けとくから勝手に中に入ってください、ということがあったとか、せめてもう少し「事前に会う予定だっだができなかった」感がほしかったところ。

ドラゴンクエストという実在のゲームが出て来るが問題ないのか? と思ったら、そもそもこのゲームはスクエア・エニックスのものだった。



漫画・コミックランキング

「鋼の錬金術師」3

  • 荒川弘「鋼の錬金術師」3(デジタル版ガンガンコミックス)

2002年10月22日刊。

1、2巻の内容を覚えていなかったので最初から読み直す。

元国家錬金術師のドクター・マルコーと出会い、「賢者の石」の情報の隠し場所を聞き出したエドとアルは、まずは身体を治すために故郷へ向かう。すご腕の整備士にして親代わりのピナコとその孫ウインリィと再会。二人の協力で身体を整備し、中央図書館に向かう。が、敵の手によって図書館は焼かれ、マルコーの資料は灰になっていた。ただ、シェスカが内容を覚えていたため、それをもとに分析。結果、「賢者の石」の材料は生きた人間であったことが判明……

結構ぎっちり内容の詰まった話なので、このレベルで粗筋を書いているとかなりの分量になってしまう。今回はバトルシーンが多く、読まされた。その一方、話の展開が複雑でわかりにくい。図書館に火をつけるよう命令した人(?)たちは、誰なんだっけ?

「魔法医レクスの変態カルテ」5(新刊)

  • 元三大介「魔法医レクスの変態カルテ」5(バンチコミックス)

本日2026年7月9日刊。発売と同時に購入。

  • Case 22~23:レクスの過去編。前巻からの引きで、レクスは魔王だったのか!? というところから始まるが、率直に言って拍子抜け。結局レクスが先代の剣王となぜ戦ったのかはわからなかったし。そこが問題ではないの? まあファレラ・ブレイドルが立派な変態だったから、それはそれでいいのか。
  • Case 24:「はめたリングが外れなくなった」と聞いただけで全容がわかったよね(笑)。
  • Case 25:ベルマには災難だったけど、命が助かったこと&修理費が全おごりだったことで十分もうかったといえるのではないだろうか。その上角も買い取ってもらえたし。
  • Case 26:ベルマが魔剣を振り回したら、普通はベルマが通り魔殺人鬼だと言われると思う。でも周囲の人は魔剣だと気づき、魔剣を叩き落とそうとしてくれたのだから、立派だ。この世界ではよくあることなのか? セントウェルリア総合病院の外科医局に魔剣でメスを作り、提供したレクスだが、最後に登場したヘリオル院長がまだ曲者で……?