鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「綺麗にしてもらえますか」1

2018年3月24日刊。「ヤングガンガン」2017年No.14, 15, 16, 20, 22, 24、2018年No.02掲載。

また面白い漫画を見つけた。熱海にある小さなクリーニング店を営む金目綿花奈(きんめ・わかな)の仕事ぶりや暮らしぶりを見守る物語である。クリーニング店が漫画の主人公になるなんて思いつかないし、面白い話になる気がしない(「カムカムエヴリバディ」というドラマはあったが、あれはクリーニングが主ではなかった)。それが、なるのである。

店は綿花奈が一人で営んでおり、受付も、クリーニング作業も、配達も一人でこなしている。それができる程度の規模でもあるが、近所の人との人間関係がうまくできており、配達中はちゃんと待ってくれる。また、定休日でもないのに店が開かないと心配してくれる人がいる(二日酔いで寝過ごしていた)。

洗ってきれいにすることに熱心で、若いのに腕前もいい。ただ、二年前より以前の記憶がまるでない。家族がいたのかどうかもわからない。謎めいた存在なのだ。「本日、定休日です」では、屋根の上で花火を見ていると、隣にボロボロになった女性の姿が見える。すぐに消えてしまうが、これは二年前の自分ということか?

初登場時のスカートが高校の制服のように見え、高校生なのかと思ったが、そうではなかった。20代の前半くらい?

すごくリアルなので、作者は熱海在住で、家業がクリーニング店なのかと思ったが、別にそういうわけではないようだ。取材だけでこれだけ描けるとはすごい。聞かない名だし見ない絵柄だなと思ったら、なんと「さんかれあ」の作者だった。

当初は三回連続の読み切りだったが、好評で月イチ連載となった由。「ヤングガンガン」自体が隔週雑誌だから、一回おきにということ。



漫画・コ

「ぬしさまへ」(再)

昨年11月に読んだばかりだが、本シリーズ第一作「しゃばけ」を読んだらもう一度読みたくなった。果たして……泣けた、泣けた。

松之助、つらいなあ。切ないなあ。でもよく長崎屋を頼ってきたよ。一太郎に会えてよかった。

2001年12月1日刊。文庫本は2004年3月28日刊。第13回日本ファンタジーノベル大賞(新潮社)の優秀賞受賞作。皮衣の鈴様への気持ちも、仁吉の皮衣への気持ちも切ないが、皮衣は仁吉の自分への気持ちを十分に知った上で店を手伝わせたり、今は孫のお守りをさせたりと、いいように利用しているのはちょっと解せない。仁吉はまだ若い。いい人(妖)を見つけてほしいもの。

「虹を見し事」……おまきちゃん。だいたい本作は割と気軽に人が死ぬ。あの時代はすぐに人が死ぬ時代だったのかも知れないが、割と救われない話が多い。何を以て救われたとするか、という解釈もあるだろうが。でもその殺伐さが時代劇というものなんだろうな。

とにかく「しゃばけ」➡「ぬしさまへ」と読めてよかった。

「漫画家接待ごはん」3(完結)

2018年6月26日刊。最終巻。

「あ・うんの会話と脇役料理」

漫画家が編集者と一緒に映画を見に行くことがあるとは知らなかった。編集者にとって、この観劇の時間は勤務時間にカウントされるの? それとも休日を潰して漫画家に付き合うの?

「思い込んだら蕎麦屋飲み」

「博多はうどんの街」って、そうなの!? 博多ラーメンはわかるけど。そういえば2巻に「博多うどんと逆接待」という話があったな……

「テキドにテキトーな中華」

作家が缶詰めになるのはスイートルームとかなのではないだろうか。少なくともビジネスホテルではないだろう。仕事のためなのだから、ワーキングスペースが確保されていないと意味がないが、たいていのビジネスホテルはノートパソコンを広げたらそれで一杯だ。漫画の原稿描きは無理だろう。最近はタブレットで描く人も多いらしいので、そういう人はそれでも進められるかも知れないけど。

「ストレスとおでん食べ放題」

「プロになったら背景はシに任せちゃうのに」(背景専門学校なんて需要があるのか?)という話が出て来るが、漫画家センセイはアシに任せるなら、任されるアシがいるわけで、当然需要はあると思うなぁ……。漫画家としてやっていくのは大変でも、きちんと背景が描ければアシで食べて行けるとなれば、それを目指す人もいると思うが……

「新たなる航海に乾杯」

担当編集者の松岡が異動し後任は鯖江に。担当が変わるのは不安だろうが、鯖江とは旧知の間柄なので恵まれているのではないかな。

全3巻を通じて:面白かった。作者としてはもう少し続けたかった素振りがあとがきから窺えるが、この手の話は延々と続けない方がいいような気がする。3巻はちょうどいい長さだと思う。

「魔法医レクスの変態カルテ」4(新刊)

  • 元三大介「魔法医レクスの変態カルテ」4(バンチコミックス

2025年1月8日刊。

  • Case 18:ドワーフのキュゼフはドラゴンに呪われていて何度も襲われている。実はキュゼフは魔力で動く自動車の開発に取り組んでおり、ようやくプロトタイプを作り上げたところ。ドラゴンはキュゼフのこの研究が気に入らないのだろう、とキュゼフは思い込んでいるが……これに関しては「もしや」と思った想像が当たった。キュゼフにもドラゴンにもお気の毒な真相だ。ところで、各章末に魔物に関する解説が文章で記されているのだが、ここでの「ドラゴン」の定義はとても腑に落ちた。ここだけにしておくのは惜しい。
  • Case 19:Case 1でレクスの手を煩わせた女性二人の同棲者の、前回騒ぎを起こした人ではない方の人が、今度は膣に魔石を入れたら取れなくなったと……。Case 1ではスライムを入れてしまって大騒ぎだったが、今回は訓練されたスライムが膣から異物を取り出す話。
  • Case 20:丸呑みすることで快感を得るヴァラと丸呑みされることで快感を得るフロギルのカップルは、喉につかえて殺し/死にそうになってしまった。
  • Case 21:マンドラゴラは薬草として有名だが、引き抜こうとすると叫び声をあげ、その声を聞いたものは精神を病んで死に至る――というのは他で読んだがなんだったか。一巻のCase 4で登場した女性の息子ロタがマンドラゴアの穴場を知っているというので、ベルマが採取に出かけるが……。無事に帰宅したあと、ベルマを褒めるレクスだが、窓の外から「とうとう見つけたぞ……魔王」とつぶやく人物がいた。というところで4巻終了。次巻ではレクスの正体がわかるか!?

「脱獄のカザリヤ」10(新刊)

  • 原作・天下雌子、作画・CHIEKO「脱獄のカザリヤ」10(マンガボックス)

2025年12月31日刊。発売と同時に購入。ようやく追いついた。

AIによると、この手の作品を「エスケープサスペンス」というらしい。初めて耳にする言葉だが、意味も分かるし言い得て妙だ。このジャンルに属する漫画作品が他にあるのかはわからないが。

加納は映美を通じて御堂に、感化院と取引のある製薬会社を調べてもらうと、それは宇賀神製薬だった。次に、宇賀神が違法に薬を横流ししているという噂を流すよう依頼。この噂に火がつけば宇賀神は証拠を消しにかかるだろう、それは劉のチャンネルをひとつ潰すことになる。

劉のもとにケンヤからの伝言を持った小春が訪れる。ケンヤは小春と一発(恐らく)ヤッたあと、小春の伝言を聞くと、歌舞伎町の店(風俗店? キャバクラ?)で客が暴れて損害が出た責任を取らされて、歌舞伎と大久保の店は李昭南が見ることになったと伝える。それはオレに対する宣戦布告だと怒った劉は、李に対する文句を小春にぶつけた挙句、ケンヤに小春を送って済まそうとしているのかと小春を殴りつける。劉はなんでこんなに始終イライラしているんだろう。たった今精を抜いたばかりなのだし、もう少し穏やかでいられないものか。小春が悪いわけじゃないのに怯える小春を殴りつけるなんて酷い。

劉は仲間の女に「李には店は仕切れない」と話すが、「アンタは怖いから」と言われてしまう。そりゃそうだ。ただそんなことをはっきり言ってこの女が殴られないかと思ったところへ映美がやってくる。宇賀神から取引停止の連絡があったようだ。劉は、自分の知らないところで漏れたと言い訳するが、映美は「あなたにはガッカリ」とにべもない。「来月新しくやって来る人に期待する」とも。

劉の話が急に広がってきた。これだけ見れば、これはこれで面白そうな話だが、真紀の萌絵捜索の話がブレないことを期待する。

さて、また特別教練が開かれることになる。男子棟では参加者リストが配布されていた。真紀に協力した早苗がラウンド3に出場。真紀は穏やかではいられないが、それより、ラウンド1で橋本祥子の出場に気付く。真紀と同部屋で、前回真紀と対戦した相手だ。その時の無気力ぶりから二週続けて参加させられることになった。

……ということは、これまでの出来事はわずか一週間のことだったのか。真紀の行動力はすさまじい、とも言えるが、いったい何をそんなに焦っているのか? そして気の弱い祥子は、今回はどうなる?

「脱獄のカザリヤ」9

  • 原作・天下雌子、作画・CHIEKO「脱獄のカザリヤ」9(マンガボックス)

2025年9月30日刊。発売と同時に購入したが、なかなか感想が書けず年を越してしまった。

菜々夏は、水攻めのあとは二日間にわたっての絶食、その後4人の男子の受刑者による輪姦。精魂尽きたところを全裸のまま皆の前に連れて行かれ、樋口映美に土下座させられた。……かくて女子棟のボスの座に映美がついた。

真紀は加納に、映美に会わせてほしいと懇願するが、加納から映美に連絡する手段はなく、それはできない。その時加納が、真紀が持つ、御堂淳との連絡用通信機を見つけてしまう。まあ、あんな大きなものを始終持ち歩いていて、よくバレなかったものだと思う。加納は御堂の存在を知ると、自分も利用できるかも知れないと考える。

加納は劉のためにこの感化院に来た、劉は映美が連れて来た。映美のおかげで劉は男子棟の王になれた。映美が身体を許すのは劉だけ。真紀は、加納の女になったということにして、しばらく男子棟にいることにする。

一方の映美は、鏡の前で茫然自失。「真紀ちゃん……怖いよう……」とつぶやく。樋口映美は多重人格者なのか。だとすると、飾矢萌絵と同一人物でかつ別人という事情がよく理解できる。ようやく謎がひとつ解けた。もっとも、樋口映美の人生がどこで始まったのか、依然として謎は多いが。

劉の外での仕事の一端が示される。感化院に来たのはヤクルートの確立のためらしい。話が急激に広がっているが、ちゃんと収束するのだろうか。

「脱獄のカザリヤ」8

  • 原作・天下雌子、作画・CHIEKO「脱獄のカザリヤ」8(マンガボックス)

2025年4月30日刊。発売と同時に購入したが、なかなか感想が書けず年を越してしまった。

劉鋭生が薬を打った真紀の服を脱がし、コトを始めようとしたところへ樋口映美がやってきて「そんなこと許してない」と声をかけ、やめさせる。劉はこの場の王であり、気が短く、乱暴で、周囲の人はビクビクしているが、映美の一言でやめるのだからたいしたものだ。その映美は前巻で榊の部屋から出て来た少女だ。この子が「真紀を死ぬよりもつらい目に遭わせるように」と指示を出した張本人なのだ。

映美は真紀に服を着せて椅子に縛り付けると、周囲にドラッグを配り、劉とおっぱじめる。そして「見ててね、お姉ちゃん」と心の中で語りかける。とすると、この子が萌絵なのか? 14歳なのに劉と肉体関係(しかもドラッグ付き)を? 真紀が気づいて「萌絵」と叫ぶと「やっと気付いてくれた……」とつぶやく。萌絵はかつてレイプされたんだっけ? 当初の設定を忘れてしまった。

ここで萌絵、いや映美はセックスをやめる。劉は「もう少しだったのに」と不満げだが、映美の顔は冷静。興奮し感じていたようだったが、演技だったのか? 真紀に見せつけるために?

部屋へ戻された真紀は、加納から樋口映美の話を聞く。真紀や加納の5週間前に入所してくると院長に取り入って関係を持ち、受刑者でありながら院長と同等の権限を振るえるようになった。そして女子棟を仕切っていた菜々夏に(刑務官を味方につけて)懲罰を与える……。

どうやら飾矢萌絵=樋口映美らしいが、映美は真紀の知っている萌絵とは別人のようだ。また、映美がなぜいともかんたんに所長の榊と関係を持ち、さらに所長と同等の権限を手にできたのか。謎は深まる。