- 原作・夾竹桃、平沢下戸、作画・沢田一「戦国小町苦労譚 農耕戯画」7(アース・スターコミックス)
2020年9月12日刊。「デジタル版コミックアース☆スター」2020年3月~7月掲載。
本巻での静子の活躍は、
1は史実かどうかは知らないが有名なエピソード。料理漫画にそのパロディが描かれたこともある。ここでは信長が「料理人の腕がいいのはわかっている。静子は食べる人の立場に立った料理だ」と喝破したところが読ませた。
2は、フロイトの前で金平糖と有平糖の解説をしたのはよくなかったのでは。信長に教えるならこっそり教えればよかった。人前では驚いてみせるべきだった。
3は、信長の命ではなく自身の判断で行なったことが画期的。農作物の育成や機器の発明(?)においては平成時代の知識・経験をもとにどんどん積極的にコトを行なっていたが、政治的な面で動くのは初めてのはず。人を動かすのは簡単ではない。まして若い女性であればなおさら。歴史の知識から「こうした方がいい」とは判断できても、行動にはなかなか移せないもの。実に大胆だが、物語が大きく動いて来た。
4の脚気は、ちょうど朝ドラ「ブギウギ」でもタイ子がかかって死にかけた事件とシンクロする。薬うんぬんより正しく栄養を取ることで劇的に改善するようだ。
さて、信長の再開発構想により静子の村は解体された。これがどういう意味を持つのか?
足満の正体が明らかに。タイムスリッパーだったのでは、という予想は当たったが、なんと、足利義輝だった。なるほど、剣の達人であったのも頷ける。例の政変で死んだと思われていたが、死ぬ直前に静子の世界に記憶喪失になって飛ばされたようだ。その足満を助けたのが静子であり、そのため足満は静子に対し恩義を感じ、一命を賭して尽くすつもりでいる。静子が織田家の発展を願うのなら、自分も手を貸すというわけだ。
足満はただものではないと感じ、喪失した記憶を取り戻させたのが濃姫というのも興味深い。濃姫が足満こと義輝を信長に紹介したところで終わり。
「ほかにもタイムスリッパーがいた」「そのタイムスリッパー同士が出会って何かが起きる」というのは「信長協奏曲」でもそうだったが、足利義輝とは、一番の大物なのではないか。これから物語はどう動くのだろうか?