鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「夢中の彼女」

  • 矢薙「夢中の彼女」

2020年9月1日刊。64ページ。

ソウジは毎晩夢を見た。それはだいたい10年後くらいの自分で、職業は様々だが、常にユイという新婚の妻がそばにいること。早寝を心掛け、夢の中の生活を楽しみにしていたが、ある時、ユイが殺人を犯した場面に居合わせてしまう。ユイというのは架空の人物ではなく、実在する人物で、その人も毎晩同じ夢を見ているのではないかと気づいたソウジは、この夢は10年後の予知夢ではないかと考えた。そこでユイの殺人を阻止するため、ソウジは――

なんとも奇想天外かつダイナミックな物語だ。いろいろ怪しいところがあるが、意外と辻褄は合っている。事件を阻止するため、ソウジ(とユイ)が取った行動が素晴らしい。結構やばいタイト・ロープだったと思うが、トラブルなく渡り切ったのは、少々ご都合主義だが、スピード感が勝っている。

このような育てられ方をした子は、心にいろいろと傷を負っていて、作中のユイのように明るく素直ではいられないのではと思うが、これは「夢の中のソウジ」の存在が大きかったのかも知れない。母親がどうなったかも気になるところだが、うまく話が付いたと考えるべきだろう。

最後はもちろん現実にソウジとユイが結ばれて終わる。二人が恋人として付き合い始めたのは、いつからなんだろうな。



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