- 乾ルカ「あの日にかえりたい」(実業之日本社文庫)
2010年5月単行本刊。文庫本は2013年6月5日刊。短編集。「真夏の動物園」「翔る少年」「あの日にかえりたい」「へび玉」「did not finish」「夜、あるく」所収。
乾ルカの本を読むのは初めてだと思われる。タイトルに惹かれ、短編なら読みやすいのではと思って購入。
どの作品も時間と空間を超越する箇所があること、北海道が舞台であることが共通する。どれも引き込まれるものがあったが、表題作の結末には驚き、印象に残っている。
小説に不満はないが、出版社には文句を言いたい。文庫本の裏表紙に書かれている本の紹介には「時空を超えた小さな奇跡と希望/『あの日』をめぐる感動の物語」と書かれている。映画でも小説でもこの手を煽りは多いのだが、自分で「感動の物語」と書く阿呆がいるか。どんな作品だって、読者を感動させたいと思って書かれているのだ。しかし、感動してもらえるかどうかは作者の筆力次第。こんな風に読む前から感動の押し売りをされても興醒めだ。こういうのはまさに「語彙が貧弱」と言うべきだろう。
ついでに帯に書かれている「読むたびに涙が止まらない」が拍車をかけている。身もふたもないとはまさにこのこと。これらを事前に目にしていなかったら、もう少し感動したかも知れない。
タイトルはもちろんユーミンの曲からのインスパイアであろう。曲が発表されて30年以上も経って、なおこのような小説を生み出し、またそのタイトルを見て買おうと思う人がいる、そこまで影響を与えたのだから、やっぱりユーミンってすげえなあ。

