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「死役所」6

  • あずみきし「死役所」6(新潮社バンチコミックス)

死役所 6巻: バンチコミックス

死役所 6巻: バンチコミックス

第25~26条はなかなかの力作だ。ホームレスになってしまった男となんとか社会復帰させたい女の話だが、女の思い込みや自己満足に振り回されて当初は嫌な思いをするも、だんだん熱意に引きずられ……たからといって、何も好転しないという。そんなに簡単に世の中は変わらないが、人の心は少し変わる。

つい最近、ホームレスに取材してnoteにまとめた人が賞を取り、たいへんな批判が巻き起こったばかりなので、結構リアルに読めた。本作はnoteの賞の話よりずっと以前に描かれたものだが、中途半端な関わり方は互いに命取りになる、ということがわかる。

第27条、前半はセクハラ問題。セクハラ自体がまず問題だけど、慰めようとして肩や腕に触るのもセクハラ、「あなたはきれいだから仕方がない」「僕もセクハラしたくなる」という発言もセクハラ。さらに女性からも痴漢されそうになり、同僚に「私って同性から見てもセクハラしたくなります?」と訊いてしまい、なにそれ自慢? と誤解される。二重三重の被害で救われない。が、その後は全く違う方向に。こういう風に裏切られるのも読書の醍醐味である。佳作。

第28~29条、夫婦仲が良く、息子が一人いて、絵に描いたような幸せな家庭。男はよき夫よき父だったが、ある日突然帰ってこなくなり、一ヶ月後に他殺死体で発見される。実は男には長く付き合ってきた愛人がおり、その人に殺されたのだった。愛人の名は西川実和子。自殺課のニシ川の生前の姿である。

面白い話だが、なぜ西川が殺人に(しかも猟奇殺人に)走ったのかが不明。余罪もいろいろあったようだが、それが何なのかも言及なし。ちょっと端折られた感があるが、職員のことだから、これから徐々に明らかにされるか。

ところで一巻以来、巻末には「業務報告書」と称するエッセイ漫画が数ページ付加されている。申し訳ないがこれが面白くない。エッセイ漫画はブームを通り越して完全に定着し、面白い人は面白いのだが、誰が描いても面白いわけではない。面白くない人には無理に描かせる必要はないのに、と思う。



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