鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「今日のさんぽんた」1

作者自身がtwitterで作品を1話ずつ公開していて、しばらく前にRTで回ってきたのをたまたま見たらすごく面白かった。調べたら単行本が出ているので即買いした次第。

りえ子という女性がポン太という犬を連れて散歩する、というただそれだけの話。ポン太の散歩だから「さんぽんた」なのだろう。まさにタイトル通り、毎回毎回ひたすら散歩するだけ。それがこの上なく面白いのである。

それはりえ子とポン太の会話である。ポン太はりえ子の話すことを正確に理解できる。その上、りえ子を取り巻く状況をほぼ把握しており、「大学」や「試験」というものがどういうものであるかも理解できているようである。しかし、ポン太はしゃべらない。心の中でつぶやくだけ。だから、ポン太が何を考え、何をつぶやいているか、りえ子は知らない。

この二人の(一方通行的な)やりとりが、絶妙のボケとツッコミになっているのである。

第一話は、大学に進学して家を出ることになったから、ポン太との散歩は今日が最後だ、とりえ子が宣言して始まる。

「寂しくなるなあポン太」
(特に寂しくもないが)
「第一志望受かってたら家から通えたんやけどな」
(お前は頭が悪いからな。仕方ないだろうな)
「恐らくおとんが次の散歩係に就任するわ。よろしくしたってな」
(お前は散歩が雑だからむしろ父親の方がありがたい)

こういった調子である。しかし、ポン太ももう年だから(本当は11歳だがりえ子は10歳だと思っている)「私が大学言っている間に寿命とか来そうやな」(そうだな)というやりとりのあと、1ページ半にわたって、ポン太の水飲み皿に汲まれる水、ポン太、りえ子の後ろ姿が描かれ、一切のセリフがないシーンには泣かされる。りえ子が寂しさに耐えているのだ。

この話のオチは、大学行ったあとも帰省のたびにポン太と顔を合わせ、家に帰ってくることはあるんだからあと100回は散歩できるな、と言ってポン太を散歩に連れ出すシーンで締めくくられる。

あとがきによると、これは元々読み切りとして描かれたが、好評だったため連載となったそうである。

りえ子はあまり勉強熱心ではなく、何事も飽きっぽい性格で、それをシニカルに眺めるポン太との組み合わせが絶妙だが、ポン太への愛情だけは長続きしている。



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