- 宵町めめ「川底幻燈」2 幻燈市の夜
川底は、川とともに生きる幻燈の町。
父は川底の町を写真に撮りたいと探し求めて帰ってこなかった。遠藤正志はここでスミダと再会する。彼女の本当の名は隅田川ほとり。町の外では川の字を隠さないといけないからスミダと名乗っているという。
スミダは正志に家に帰るように言うが、正志は言うことを聞かない。数日後に開かれる幻燈市というお祭りの日の夜には帰るとスミダに約束させられるが、正志は父の思い出と引き換えに記憶を売ってしまう……
いろいろと複雑な設定になっている。川底の町は普通に来ようとしても来られない。風の気配(正体はカゼオイという魚)を追いかけるとたどり着けることがある。川底の町の人は外の世界に自由に行き来できる。川底の町には死者のいる一角がある。夜の人という、夜しか存在を認知できない人も(大勢)いる。また幻燈屋という店がある。これは幻燈と引き換えに記憶を奪う店。ただし記憶を売ると存在も薄くなり、夜の人みたいになって帰れなくなる。
ラストに醒井(さめがい)という列車の車掌のような男性と宇里子という女性が登場するが、何者かは不明。
全33ページだが、表紙と扉で3ページ、前巻のあらすじで1ページ、解説に2ページ、次巻予告で2ページを費やしている。つまり本編は25ページ。薄い本だ。
ていねいな解説は結構だが、雰囲気を味わう作品だと思うので、少しくらい意味がわからなかったり筋が通らなかったりしても、そこが問題ではないと思う。あらすじや解説もそうだが、本文中も説明目的のセリフがとても多く、興を削いでいる。自分の絵の表現力にもっと自信を持ち、文字の量を半分に減らしたらもっとはるかに良い作品になったのに、と思わなくもない。
今回は、存在しないと思っていた少女に再開できたこと、川底の町が紹介されたこと、彼が家に帰らずその町に居ついてしまいそうになるというだけ。あまり話は進まなかった。