鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「川底幻燈」1

  • 宵町めめ「川底幻燈」1 風追いの町

幻想的な表紙の絵に惹かれて購入。もともとはコミティア等で頒布された同人誌で、kindle版は2018年9月14日、ナンバーナイン刊。46ページと「薄い」割に、値段はそこそこする。お宝本だと価値を認められる人にとっては……ということだろう。

絵柄は独特で、昨今の人気漫画家の誰にも似ていない。この作者の描く風景は、懐かしいような、見たことあるような、不思議な雰囲気があり、ずっと眺めていられる。

遠藤正志は、学校で女子更衣室が盗撮されインターネットに上げられたという事件が起きた時に、写真が趣味でカメラを持ち歩いていたことから盗撮の疑いをかけられ、学校に行かれなくなった。休んでいる間、同じクラスのスミダさんが毎日のように学校で配布されるプリントを持ってきてくれたが、彼女が忘れ物をした日に、学校に彼女の住所を問い合わせると、遠藤宛のプリントは郵送しており、スミダなどという女生徒はいないとのことだった。

混乱した正志は、何か大切なことを忘れているような気がして、失踪した父親がかつて言っていたことを思い出しながら風を追いかけて歩き続けたら、川底のような町にたどり着いた……

絵は、未熟といえば未熟だが、圧倒的な迫力はある。こういう作品が同人誌として存在しているところに、日本の漫画文化の層の厚さを感じる。



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