- 永田礼路「君の薫る星」(ナンバーナイン)
2021年4月30日刊。短編集。コミカルなだけの作品もあるが、コミカルな中にも人情味を感じさせる話が好きだ。
「ガーベラの教室」が出色の出来だ。おじさん三人がカフェでお茶を飲んでいると花売り少女が花を売りに来る。何かひとつ、質問をすることを条件に花を買うと言い、少女は毎日「空はなぜ青いのか」「休日は誰が決めたのか」など、どうでもいい質問をすると、おじさんたちは交代でていねいに説明をする。「こんなことを知って何の役にたつの?」と問う少女に彼らは「なんにも!」と答え、ニコニコしている。少女は、計算さえできれば商売ができると思っているのだ。
そのうちに、世の中のわからないことがひとつずつわかっていくことに興味を覚えるようになった少女は、彼らに訊くのだ。「学校に行くにはどうしたらいいですか」。
表題作は切ない。夫に先立たれた妻が急激に身体を弱らせるが、夫の匂いを嗅いで在りし日を思い出し、笑顔で人生を終える。要約すればそういうことか。夫がなぜ死に至ったのかよく理解できなかったが、そこは重要ではないだろう。
商業誌掲載は「ガーベラの教室」のみ。最近の同人誌やSNSは恐ろしくレベルが高い。