鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「頽廃の花売り」

  • うさみみき「頽廃の花売り」(星海社コミックス)

2019年8月12日刊。

うさみみきの作品は、どれも設定が奇抜である。そのため状況を理解するには少し時間が必要だが、実はそれは物語の本筋にはあまり関わりがない。主軸となるのは恋愛、友人愛、家族愛。その発露と絡め方が絶妙なのだ。

舞台は、人間が異民族? 異生物? に差別され、迫害される世界。表向きは差別は禁止されているが、人間を狩ってその肉を食べようとする「人肉屋」も存在した。

一方、他国との領土争いの紛争も継続的に起きており、ガーディアンと呼ばれる軍人は市民から尊敬され、崇められていた。

両親を人肉屋に殺された少女と、少女を助けたガーディアンが「兄弟」として共同生活を送るところから物語が始まる。

少女は「兄」や、母親代わりの近所の花屋などの庇護の元、徐々に明るさを取り戻していく。「兄」は環境の悪化に寄り身体が徐々に腐敗し、身体の八割が機械。声も人工声帯。寿命は一年を切っている。残りの人生は最後まで市民を守るために使おうと考えている。……

泣けるんだけど、それは少女や「兄」、「兄」の友人、花屋などの心情を、ていねいにていねいに描き込んでいるからだ。

同じテーマで同人誌が二冊出ている。

  • 「頽廃の花売り: 同人誌版」(同人誌版は2017年5月6日刊、kindle版は2019年2月6日刊)

商業版は本作のリメイク。絵はペン入れがなされていないが、不思議と雑な印象はない。

  • 「頽廃の花売り かえりみち」(同人誌版は2019年8月25日刊、kindle版は2021年6月7日刊)

商業版にないエピソードを描いたもの。