鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「螺旋じかけの海」全4巻

もともとは月刊アフタヌーン講談社)2014年5月号~2017年2月号に不定期連載された作品。一巻が2015年10月23日に、二巻が2016年12月22日にアフタヌーンKCとして販売されるが、以後刊行されず。作者は出版契約を解除して作者管理とし、現在はkindle版にて全4巻が刊行中。

業界事情は知らないが、自分とこの雑誌に掲載した作品の単行本を出版せずお蔵入りにさせておくのは酷いと思う。売れそうもない、と判断されたのかと思うが、紙版ならともかく電子版なら敷居はずっと低いはず。作者が自分の管理にしたのは正解だが、いろいろと腑に落ちない。

内容はハードバイオSFとでもいうか。舞台は遺伝子操作が産業として発達した世界。水没した街の残骸で暮らす人々の中には「異種キャリア」と呼ばれる異種遺伝子を持つ者が存在する。恐ろしいのは、人間に対しても、本人の意志を無視して勝手に遺伝子操作をする人(組織)がいるということ、そして、人間の遺伝子の割合が一定以下になると人間とは認められず、人権もなくなってしまうこと。だから、異種キャリアな人は、人間以外の遺伝子の割合を必死で抑えようとする。そんな世界で医師の音喜多のもとには、さまざまな悩みを抱えた人が訪れる……

設定も異色なら彼らの悩みも解決方法も異色。そういう状況で、ルールを守りながら、時にはルールを逸脱しても、人間としての尊厳を守ろうとする人たちを描いたヒューマンドラマ、と言えばいいか。第一話から最終巻最終話まで圧倒される。

出版社が後悔するほど売れたらいいなと思う。



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