- 西餅「僕はまだ野球を知らない Second」2
2022年7月28日刊。発売元不明。自費出版ということでいいのだろうか?
浅草橋工は三回戦を勝ち、ついに十条学院と激突。十条学院は甲子園の優勝経験もある強豪校で、宇佐監督の実父・冴島が監督を務めている(宇佐美監督は母方の姓を名乗っている)*1。旧態依然としたスパルタ式で、ケガをしたり、精神を病んでしまう部員も少なからずいる。部員の中にも疑問を持つ者もいるが、世間の多数が認める方法であり、実績もあるため、正面切っての批判がしにくい。また、宇佐美のような教師兼任ではなく、野球の腕だけを買われた専任監督である冴島は、結果を出さなければ批判の矢面に立たされるし、首になる可能性もある。そのために常に追い詰められており、選手の将来のことなど考えられない、という事情もある。
本巻の大部分は冴島監督と十条学院の実情を描くのに費やされていて、読んでいて楽しくない。これが現在の野球強豪校の実態に近いと思われ、それを可視化したという点ではたいへん意義のある内容になっているが、読むのはつらい。もっとも、恐らくはそのために、合間合間に西餅独特のギャグが散りばめられているが、そのためテンポがちょっと悪くなっている。
初回の表、浅草橋工は三者凡退、裏、長浦がマウンドに立ったところで終わり。スポーツ漫画としてははなはだ残念。次巻に期待。
印象に残ったシーンは、深川がうまく狙い球を絞れず、宇佐美監督が「深川君用にもっと単純化したやり方が必要ですね」と言ってしまうところ。あとでキャプテンの吾妻が監督に言う。深川みたいに積極的に言語化しないタイプにはどんどん話を振らないとダメだ、ということと、「深川用にもっと単純化したやり方」という言い方は傷つくと。
そういうことに気づくことも、それを監督に素直に進言できる吾妻も立派なら、それを聞いた監督が「本当にそうですね」と反省するところも立派だ。また顧問の河原崎が、「次の相手が十条学院だから監督もナーバスになっている」と監督をかばいつつも、吾妻に対し「よく見てるね」と褒める。このあたりが浅工の美点だろう。吾妻は指導者を目指しているようだ。いい監督と出会えてよかった。