鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「工場夜景」(新刊)

  • 有賀リエ「工場夜景」(モーニングコミックス)

2022年6月22日刊。

発売直後に購入したのだが、数ページ読んで、ヤバイ、と感じた。今読むべき本ではないと思ったのだ。で、昨日、ようやく読んだ。これは正解だった。とてもよい作品だが、かなりメンタルを抉られる。心身の調子が良い時でないとキツイ。

高校3年生の碧(あお)と貴臣は中学1年生の時からの知り合いで仲良し。お互いに淡い恋心を抱いているが、付き合ってはいない。貴臣は思い切って、夏休みに一緒に工場の夜景を見に行こうと碧を誘う。碧はもちろん承諾し、その日を心待ちにしていたが……

碧の父が準強制性交等罪で逮捕。被害者は貴臣の母だった。

その日から碧と碧の家族も、貴臣の家族も、全く世界が変わってしまう。貴臣は、碧の父親がクソだとしても、碧には何も関係がないから、今まで通りで行こうとするが……

被害者とその家族、加害者の家族の「その後」を描いた作品。悪いのは加害者ひとりのはずなのに、長い間にわたって、周囲の人は皆不幸になる。

家族にはやさしかったはずの碧の父がなぜ? とも思ったが、読み返してみると、娘を励ますために平気で妻をディスっていて、母親のことを人間扱いしていないなあと思うし、そもそも職場の上司・部下だったという。責任を取った形になったために問題視されていないが、そこにパワハラがなかったとは言えない。

恐らく碧の父は、その後も似たようなことを繰り返していたのではないか。会社の中で「それなりの立場」にあるため、大半は泣き寝入りになったと思われるが、中には単なる「ワンナイト」と思って流した相手もいただろうし、碧の母のように、うまくいったケースもあったかも知れない(結婚後は不倫だが)。

貴臣と碧は、これからどうなるのだろうか。貴臣は、碧との愛を貫こうとするが、難しいだろうと思う。第一に、母親に話せないだろう。



漫画・コミックランキング