- 石持浅海「罪人よやすらかに眠れ」(角川文庫)
単行本は2015年11月刊。文庫本は2018年5月25日刊。連作短編集。「友人と、その恋人」「はじめての一人旅」「徘徊と彷徨」「懐かしい友だち」「落とし物」「待ち人来たらず」「今度こそ、さよなら」所収。
読み終わって、あ、これは「九マイルは遠すぎる」だな、と思った。
古典的なミステリーは、殺人事件が起きました、犯人は誰でしょう、という展開だが、「九マイルは遠すぎる」(ハリイ・ケメルマン作)は、何気ない日常の描写からそこにひそむ謎を探り当てる展開で一世を風靡した作品であり、以後、有象無象の類似作品が登場したエポックメイキングなミステリーである。類似作品というより、新しいジャンルを開拓したと言っていいのではないか。
本作は、札幌の中島公園の近くにある豪邸に人が訪ねて来るところから始まる。積極的に訪ねて来るというより、家の前で困っている人、倒れている人などを家の住人が見つけ、招き入れることがほとんどである。家の住人は夫妻と中学生の娘、執事、メイド、そして居候の若い男の六人。この若い男が、客の断片的な「道に迷った」とか「頭が痛い」といった説明を聞いて「あなたは人を殺して逃亡中ですね」のように、ズバリと当ててしまう。このあたりが九マイルだなと感じた所以。
本作で興味深いのは「家」が業を背負っている人間を呼び寄せているらしい点。夫妻も娘も、純粋に親切で困っている人に声をかけるのだが、毎回「そういう人」だけを連れて来てしまう。また、謎が解き明かされたら家を出なくてはいけない、というルールもあるらしい。とすると、この家の住人も(少なくとも中島親子以外の三人は)何かの業を背負っているのか。住み続けているのは、その業が明らかにされていないからか。
業を明かすことがメインであり、事件そのものをどのように解決させるかには明確な言及がない。とても物足りなく感じるが、そこは読者が想像してくださいということか。

