鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「賢者の贈り物」

2011年5月18日刊。連作短編集。単行本は2008年4月刊。「金の携帯 銀の携帯」「ガラスの靴」「最も大きな掌」「可食性手紙」「賢者の贈り物」「玉手箱」「泡となって消える前に」「経文を書く」「最後のひと目盛り」「木に登る」の10編所収。

自宅の書棚から。一応、以前読んだ時のことをかすかに覚えていた。

各話は誰もが知っている童話や昔話、有名作家の著名な作品からモチーフを得たもの、という点で共通している。テーマはいわゆる「日常の謎」で、全話を通じて、死んだり傷ついたりする人は皆無。ほとんどの作品はハッピーエンドで終わる。石持作品としては異色の部類な気もするが、最近読んだものでは「殺し屋、やってます。」も実は「日常の謎」なのだった。

作品としては少々期待外れ。あれこれ推理をするが、結論のわからない作品がある。「金の携帯 銀の携帯」と「玉手箱」。「最も大きな掌」もそうかな。これではミステリーとして成立していないと思うのだが。

「最後のひと目盛り」は「最後の一葉」をモチーフとしたもの。「最後の一葉」は、爆弾のスイッチが入らないように必死で持ちこたえた人間の話だが、「最後のひと目盛り」は目の前でぶっちぎるという策。これは興味深い解決法だ。現実に適用できるかも?

最終話「木に登る」は愉快なコメディだ。