鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「平和の国の島崎へ」3

  • 原作・濱田轟天、漫画・瀬下猛「平和の国の島崎へ」3(モーニングコミックス)

2023年8月4日刊。

最初の話は、公園でよく顔を合わせるが、本名も住所も知らない人が、最近いないねーというところから、彼女が自宅で倒れているのを島崎が見つける話。殺人(テロの遂行)に特化されているはずの島崎の能力は人を救うこともできると、島崎自身が認識する。

次の話は町内会のイベントで着ぐるみを着る話。着ぐるみの中からも島崎の殺気が見え隠れし、子どもたちは怯えて近寄りたがらない。が、殺陣の練習をするうちに、人を倒すための技と人を喜ばせるための技の違いに気付き、そうすればもとより運動神経は抜群なことから、派手な殺陣をやって観客に喜ばれる。

島崎が服を買う回もある。これまでは支給品を着るのみで自分で買い物をしたことがないと聞いた漏らしたことから、漫画家の川本マッハとカオリ(川本マッハのアシスタント&島崎のアルバイト先の喫茶店の娘)が島崎に似合う服を見つけるイベントが始まる。

こうしたことを通じて、島崎は徐々に「普通の人」になり、「普通の社会」に馴染んでいく……ように見える。が、各話のラストには、島崎が戦場に復帰するまでのカウントダウンが常に掲示されており、やはり普通の人にはなれず戦場へ戻っていくのかと思うと不気味である。

後半は、島崎を追い詰めていく組織の話に移る。我々は、「抜け忍は死」というルールがDNAに刻み込まれているから、組織が退職者を追いかけるのを不思議に思わないが、冷静に考えれば、莫大なエネルギーと人材の無駄である。現在LEL(島崎を拉致し、教育したテロ組織)に属する人は、その崇高な理念に共感しているようだが、本当に崇高な組織であれば、辞める自由は認められてしかるべきだ。



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