鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「ひとりでしにたい」1

  • カレー沢薫(原案:ドネリー美咲)「ひとりでしにたい」1(モーニングコミックス)

カレー沢薫が終活をテーマにした作品を描いていて、文化庁メディア芸術祭で優秀賞を受賞するなど、話題になっているらしい。作者のインタビュー記事を読んで興味を持ち、購入してみた。

現在、親の面倒と実家の管理をしていて、結構たいへんで、これが終わったら自分の老後だなあと考えていた矢先なので、書かれている内容は非常によくわかるし、「刺さる」ものでもある。

子供の頃憧れていたキャリア・ウーマンだった伯母が孤独死したという話を聞き、35歳で独身・一人暮らしの山口鳴海は、自分も将来そうなるのではと不安になって行動を起こすところから物語が始まる。それを知った職場の同僚(年下)の那須田が鳴海に話しかけ、話が転がっていく。

基本スタイルは、那須田が物知りで、鳴海が那須田に教わって現実を知っていくというスタイル。ただ、単なるお勉強漫画ではないのは作者のセンスの賜物だろう。鳴海と那須田の会話で話が進んでいくのだが、この二人の掛け合い漫才が絶妙なのである。

例えば、那須田は以前から「山口さんと仲良くなりたいな~」とひそかに思っていたから「話すきっかけができた」と思って食いついていくのだが、それをはっきりと言えないため、鳴海は那須田を腐乱死体愛好家なのでは、とずっと疑っていたり。苦し紛れに「アイドルが好き」と言ってしまい、ドルオタの鳴海は急に目を輝かせて「誰担当?」と訊いてきたり。

ただし、なるほどと思わされる部分も多い。

兄弟仲良くしなくちゃ、と急になれなれしく連絡を取り出して、却って嫌われたりとか。困った時にどこに相談すればいいかは、元気な時に調べておかないと、本当に困ってからは調べる元気がない、とか。オタ活をやめたら生きる希望がなくなるから、そこはやめない方がいい、とか。

鳴海は、問題発言もするが、基本的には素直で、自分が悪いことを言った、と思ったら反省する度量の広さはある。これが本書を気持ちよく読んでいける第一の要因である。

これは続きを読まなければ。