- 殿ヶ谷美由記「氷属性男子とクールな同僚女子」1(デジタル版ガンガンコミックスpixiv)
2019年7月22日刊。
また尊い作品を見つけてしまった。
サラリーマンの氷室くんは雪女の末裔で、彼の周囲はいつも雪が降ったり霜が降りたりしている(室内でも)。何かに夢中になると吹雪が吹き荒れ、心が熱くなると周囲が凍てつく。緊張すると自身が凍り付く。気分が落ち込むとかまくらに引きこもる。そして照れると溶ける。
まったくもって迷惑な存在だが、そんな彼を職場の同僚は何も気にせず受け入れている。そういう異形の者がおおぜい闊歩する世界なのか? というと、どうもそういうわけでもなく、他の人は普通の人間らしい。とはいえ、前半は氷室くんと冬月さんの二人だけ、途中で冴島くん、狐森さんが登場したのみであるが。
なにかと困りごとの多い氷室くんに、同期の冬月さんがいろいろ世話を焼くのだが、氷室くんはそれが嬉しくて、そして冬月さんがかわいくて仕方がない様子を描いている。それだけと言えばそれだけの話である。が、これが実に尊い。
冬月さんは美人だが、着ている服のセンスがいい。この会社は男子は皆スーツにネクタイだが、女性の服はあまり強い規制はないらしく、割とラフな格好の時もある。そして毎回違う服を着ているのがすごい、どれも似合っているのがすごい。そしてそれを描き分けている作者がすごい。これは毎話楽しみにし、かつ感心しているところだ。
冬月さんはクールビューティ系で、どちらかといえばあまり表情が変わらないタイプだが、氷室くんに関しては結構感情が豊かになる。その小さな変化がかわいい。仕事もできるようだが、やや天然の傾向もあり、それもかわいい。
狐森さん初登場のシーンは、「冬月さんって、氷室さんのことどう思っているんですか?」だった。もちろん、氷室は偶然通りががって二人の会話を聞いてしまう。ここで冬月が「好きです、結婚したいと思っています」と言ったら面白くない。かといって、「別に、ただの同僚ですよ」「じゃあ私が氷室さんと付き合っても構いませんね?」みたいなやりとりも、ありきたり過ぎてオチない。が、ここでの冬月さんの答えは「いっしょに雪だるまを作りたいです」。これには意表を突かれた。
狐森は別に氷室に気があったわけではなく、氷室と冬月が仲良さそうに見えるから、気になって確かめてみたというところだろう。その後、狐森の声掛けによってクリスマスイブに冬月の家に狐森、氷室、冴島が集まることになる。この日、少しだけ二人の距離は縮まった。奥手の二人の背中を押したのが狐森だったと言えなくもない。
描きおろしの最終話(二人が出会った時の話)を読むと、氷室から「雪女の末裔」と言われた冬月がかなり驚くシーンがあり、本当に一切気にせず受け入れたわけではないことがわかる。驚き、戸惑いつつも、差別したり敬して遠ざけたりせず、普通に接する努力を続けたのだろう。

