鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「嫁ぎ遅れた狐が嫁に来る話」1、2

  • ざんまゆう「嫁ぎ遅れた狐が嫁に来る話」1、2

ゴローが山道を散歩していたら狐が倒れていたため助けたところ、若い(人間の)女性の姿になり、恩返しだといって嫁に来る話。ゴローの前で困って見せたのは、きっかけ作りのための嘘だった可能性が高い。

きつねの名はこがね。適齢期を逃し、人間に化けて異類婚姻するしかないという。こがねに強く言い寄られ、ゴローが断わり切れずに家へ連れてくるところから話が始まる。ゴローは間もなく30歳になる独身男性。ブラック企業でこき使われ、メンタルをやられかけていたが、業務が改善されて、時間と気持ちに少し余裕が持てるようになってきたところ。

さて、設定こそ突飛だが(昔話によくあるパターンだが)、そのあとは、実はごく普通のほのぼの恋愛譚である。ゴローは、好きでもない相手と結婚することはできない、と言い、しばらく一緒に暮らして様子をみることを提案する。それぞれが互いをよく知って、結婚相手に相応しいかどうかを、そして狐が人間社会で本当に不自由なく暮らしていけるかどうかを判断しようと。

こがねは、世の中のさまざな点で躓きながらも、ゴローの嫁に相応しいと思ってもらえるよういじらしい努力を重ね、ゴローはそんなこがねを少しずつ好きになっていく。

ただし、まだ付き合っているわけではないので、エッチな関係にはならない。こがねはそれを当初から望んでいるが、ゴローは妙に潔癖だ(だからゴローは「同棲」と言っているが、これは間違い。「同居」が正しい)。

「妙に」潔癖というのは変か? ごく当たり前の話か? しかし友達ではなく、もちろん親戚でも兄弟でもなく、結婚を視野に入れてのお試し同居生活なのだから、そちらの方も試してみればいいのに、とは思う。もっとも、そういうシーンがないため、漫画作品としては健全な内容になっている。

ゴローは、狐だからといって、生理的あるいは道義的にダメだとは思っていない。基本的にはこがねに好感を持っているが、うまくやっていかれるのかどうか、慎重に確認している感じである。2巻あたりでは、かなりラブラブになってはいる。

こがねの出自が狐であるという点は、物語にさほど大きな影響を及ぼしてはいない。つまるところ、結婚を意識した二人のラブストーリーに収斂される。

ところで、事前には全2巻だと思って購入したのだが、既刊が2巻というだけだった。2巻で20.5話まで進んでいるが、現在の連載は72話まで進んでいるようだから、少なくともあと5冊は出るということ。ほのぼのしていて面白いんだけど、3巻以降はどうするかな。



漫画・コミックランキング