- 奥灘幾多「スライトセルフエスティーム」(電書バト)
2022年9月1日刊。新刊というには少し空いたが、最近出たばかりの本。連作短編。
- 大学一年春
- たまったもんじゃない/高校三年冬
- (たぶんきっとおそらく)(でも責任は取れないから)/高校一年春
- 二年半(中学生)
- 一年春 贅沢ないいわけ
- 二年秋 自分を見下して
- 三年夏 強豪校のベンチ入り
- 中学三年冬
「たまったもんじゃない」は恋愛ドラマ。
ヒロ(男)はずっと仲の良かった相浦(女)に、勝算ありとして告白するが、友だちとしては好きだけど付き合えない、と断わられる。相浦の恋愛対象は女であって男ではなかった。親友のユウキ(男)に愚痴るが、告白しないで後悔するよりした方がよかったと語る。ユウキはヒロに、実はヒロのことが好きなんだと話す。友達としてではなく……
そういう話なのかと思ったら、その後の話は、相浦が主人公ではあるが、部活を中心とした人間関係や、精神的な成長などを描いた物語であり、恋愛のことは語られない。運動部(バスケ部)の話なのに、運動(バスケットボール)について描くことなく、人間関係にスポットを当てているのは珍しい。
「たまったもんじゃない」は傑作短編だと思ったので、ちょっと当てが外れた格好だが、これはこれで面白い。この作者は人間の心の襞を描くのがうまい。