鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「おとなりボイスチャット」3

2019年6月28日刊。

浜渦恵登場。以前10年以上もアパートに住んでいた人で、陽奈子とも、陽奈子の祖父とも仲良くしていた。今は部屋を出ているが、陽奈子の現状についても知っており、心配もしている。ある日、久しぶりに陽奈子を訪ねて来て、相変わらず引きこもっていることを知ると、ここから引っ越すよう促すが、陽奈子はここから離れたくないという。

田力は、誰とも会わない、会えないと思っていた陽奈子が、恵は平気で部屋に入れ、食事を振る舞ったりしていることを知って動転する。実は、陽奈子がこの部屋を出たくないと言うのは、田力と離れたくないという意味だったのだが……

しかし、いくら引きこもりになる前に10年以上も家族ぐるみで親しく付き合ってきた相手だからといって、簡単に部屋へ入れるだろうか? こうなってしまった人は、親兄弟とも会いたがらない方が自然だと思う。まして恵は異性だ。一人暮らしの女性の家に単身で訪ねて行って、部屋へ入れてもらえると考える恵も非常識だが、会うのに葛藤のない陽奈子の心境もいささか疑問ではある。

恵は実は売れっ子俳優だった。

ある日、恵が田力を大学まで訪ねて来て飲みに誘う。田力と、行きがかり上同道した美月は未成年なので飲めず、恵だけが飲む飲み会となったが、そこで恵は100万円の札束を渡し、アパートから出て行ってくれと田力に言う……

美月は、周囲の人間誰もがわかるほど田力のことが好きだと顔に書いているが、田力はそれに全く気付いていない。そして陽奈子とのことを美月にばかり相談するという残酷な展開になっているが、陽奈子のことを(声だけとはいえ)知った美月は、自分にワンチャンあるなら、と考える気持ちも本当なら、二人の力になりたいと思う気持ちも本当なのだ。いい人だ、美月は。田力クン、君がいらないならオレがほしいぞ。

恵サンは、自分では陽奈子のことを考えているつもり、いいことをしているつもりなのだろうが、だいたい自分でそういうつもりになっているひとは、周囲から見れば迷惑だったりするものだ。自分も、あまり好きにはなれないが、今後、大きく関わってきそうである。



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