鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「他人のセックスを想像するな」

  • 西沢5ミリ「他人のセックスを想像するな」

他人のセックスを想像するな

他人のセックスを想像するな

絵を描く人は、表紙には最も魂を込めて描くのだろうけど、プロの漫画家でも、変に力を入れ過ぎて却っておかしくなっている例を散見する(誰とは言わないけど)。しかるに西沢5ミリは表紙が際立っている。もちろん表紙だけが際立っている、というわけではない。

絵はうまいけどストーリーがありきたり、という人がプロの漫画家にもいるが、西沢5ミリの作品は、可愛い女の子が出てくる割に話が可愛くない。ビターな大人味なのだ。

表題作は、簡単にまとめられるような話ではないが……

主人公の女性は、とあるきっかけで同性愛者だということが職場に知られてしまう。以来、男性からは「もったいない、男を教えてやろうか?」などと迫られ、女性からは「いやねえ、更衣室で着替える時もそういう目で見られていたのよ」などとひそひそ言われる羽目になり、転職を考えていた矢先に、ある女性から面と向かって「気持ちが悪い」と言われてしまう。

さすがに聞き流せず、「何が気持ち悪いの?」と問い質すと、「せっ、セックスしているところを想像すると、とても気持ち悪い」。それで「そもそも他人のセックスを想像する奴の方がキモいと思うけど」とにらみつける……

その後の展開もいろいろだけど、主人公たちは、真面目なだけ、かわいいだけ、あるいは意地悪なだけの単純な成り立ちにはなっていない。そして(ここが大事だが)表情が豊かだ。そのため、二読三読してしまう。

もうひとつの話もいい話だった。ちょっと涙が出そうになった。



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